整骨院・接骨院の開業について、開業経験者である岩井氏(柔道整復師・鍼灸師・あんま・マッサージ指圧)監修の下、失敗しないポイントを中心に解説します。
とくに重要な①行政対応(開業に必須な保健所の登録・審査)、②店舗作りの落とし穴、③開業資金の確保などを中心に、皆様が失敗をしないで無事開業できるよう、わかりやすく解説します。
目次
整骨院・接骨院開業で失敗せず、しっかり儲けるには
整骨院や接骨院の開業は、夢のある一方でリスクも伴います。開業後にしっかりと利益を上げるためには、事前の準備と計画が非常に重要です。
ここでは、整骨院開業の落とし穴と、開業後に儲けるためのポイントを解説します。
まずは開業の落とし穴を知り、それを避ける方法を考えましょう。
そして、開業後の収益向上につながる施策を講じることで、安定した経営を目指すことができるでしょう。
整骨院開業の落とし穴
整骨院開業には、いくつかの落とし穴が潜んでいます。
とくに注意したいのは以下の3点です。
- 行政対応の遅れ:開業に必須な保健所の登録・審査の要件を満たしているかが非常に重要です。予想以上の時間がかかるため、必要な届出を把握し、余裕をもって手続きを進める必要がある。
- 店舗作りの予算オーバー:備品や機器のリストアップが不十分だと、予算オーバーになりやすい。あとから必要なものが出てきたり、気がついた時には高額になっている場合があるので注意しましょう。
- 開業資金の不足:開業後すぐは収益が安定せず、資金ショートのリスクがある。療養費の入金は半年待つ場合もあります。そのため十分な計画と運転資金を用意しておくことが重要です。
これらの落とし穴を認識し、十分な準備と計画を行うことが、失敗を避けるカギとなるでしょう。
電話・インターネット契約にも時間を要するため、スケジュール管理が重要です。
開業のために知識や技術を磨いても、開業方法を学ぶ機会は少ないため、いざ始めようと思っても最初はうまくいかないことが多いです。特に物件選びは重要で、柔軟に対応しにくい部分もあるため、事前に必要な条件をしっかり準備しておくことが大切です。また、内装や機器に過度にお金をかけると失敗しやすいので、本当に必要なものかどうかを何度も確認しましょう。資金不足は閉院に直結するため、常に厳しめの予測を立てておく方が無難です。さらに、電話やインターネット契約にも時間がかかるため、必要なものの納期を含めたスケジュール管理が重要です。
整骨院開業後にしっかり儲けるには
開業後に安定した収益を上げるには、以下のポイントが重要です。
- 差別化された施術とサービスの提供:他院にない独自の施術やサービスを打ち出し、患者さんから選ばれる整骨院を目指す
- 効果的な:ターゲットとする患者層に合わせた広告媒体の選択と、魅力的な広告文の作成
- 適切な料金設定:施術の価値に見合った料金設定を行い、患者さんの理解を得られるように丁寧に説明する
- スタッフ教育と接遇の徹底:スタッフの施術スキルと接遇力を高め、患者さんの満足度を上げることでリピートにつなげる
開業後も継続的な改善を行い、患者さんに選ばれる整骨院づくりを進めていきましょう。
安定した経営は一朝一夕では実現しませんが、地道な努力を積み重ねることで、必ず結果を出すことができるはずです。
初期の集患には必ず苦労が伴いますが、この課題をクリアすることで成功の確率が大きく向上します。現在、整骨院や接骨院を含む健康関連施設が多く存在するため、独自性や専門性が一層重要です。自分の施設の特徴を常に明確にし、他と差別化を図ることが必要です。独自の軸がしっかり定まれば、質の高いマーケティングも実現できます。また、価格設定については、安すぎても高すぎても適切ではありませんので、自分が納得できる価格を設定することが重要です。
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整骨院・接骨院開業のながれ
整骨院や接骨院の開業には、一定のプロセスと準備期間が必要です。
開業までの流れを理解し、適切なスケジュール管理を行うことが、スムーズな開業につながります。
ここでは、整骨院・接骨院の標準的な開業スケジュールを例示しながら、各段階で必要な手続きや準備について解説します。
整骨院・接骨院の開業スケジュール例
整骨院・接骨院の開業までのスケジュールの流れをご紹介いたします。
- 場所の選定(3ヶ月前):開業場所を決定し、物件の契約を進める
- 資金計画(金融公庫)(3ヶ月前):開業資金の調達に向けて、金融機関との相談を始める
- 内装工事(2ヶ月前):店舗の内装工事に着手し、開業に向けた環境を整える
- 機器・資材手配(2ヶ月前):施術に必要な機器や資材の手配を行う
- 従業員の採用(2ヶ月前):スタッフの採用活動開始
- ホームページ作成(2ヶ月前):ホームページを作成し、情報発信の準備を進める
- 開設届(1ヶ月前):保健所への開設届の提出を行う
- 施術所の検査(1ヶ月前):保健所による施術所の検査を受ける
- 各種届出(1ヶ月前):柔道整復師の届出、生活保護法指定、国保・社保の施術所指定など、必要な届出を行う
- 開業・受付開始(開業月):施術とともに集客活動にも力を入れていく
以上が整骨院・接骨院の標準的な開業スケジュールです。
各段階で必要な手続きを漏れなく進めるとともに、想定外の事態にも臨機応変に対応できるよう、余裕をもったスケジュール管理を心がけることが大切です。
また、店舗を作っていく上での落とし穴として、ネットや電話番号の準備が完遂するのに時間がかかる場合があります。
ベッドやその他の備品に関しても、色やサイズがすぐに揃わないこともあるため、こちらも余裕をもったスケジュール管理を行うのがいいでしょう。万全の準備を整えて、開業に臨みましょう。
開業には必ず予期せぬ事態が発生するものです。そのため、必要なタスク管理ができる資料を作成しましょう。私は常にその資料を確認しながら開業準備を進めていました。また、同時期に行う作業が多いため、常に進捗をチェックできるようにしておくと良いです。人に相談したり頼んだりすることも重要ですが、各タスクの確認は自分で責任を持って行うことで、トラブルを防ぐことができます。
整骨院開業で必ず必要な2大要件「施術管理者」と「実務経験期間」について
整骨院を開業するには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、中でも重要な2つの要件が「施術管理者」と「実務経験期間」です。
施術管理者になるためには、柔道整復師の資格取得後、3年以上の実務経験を積む必要があります。
柔道整復師としての臨床経験を十分に積んで施術技術を磨くとともに、施術所の管理運営に関する知識やスキルを身につけることも重要です。
施術管理者になるためには、施術管理者研修の受講が義務付けられています。
この研修では、施術所の管理運営に関する法律や規則、衛生管理、施術の安全性確保などについて学びます。
上記をまとめると整骨院の開業には以下の3点が必須要件です。
- 柔道整復師の資格
- 3年以上の実務経験
- 施術管理者研修の受講
開業を目指す柔道整復師の方は、これらの要件を念頭に置き、着実にキャリアを積んでいくことが大切です。
事業計画の立て方
整骨院の開業にあたっては、しっかりとした事業計画を立てることが非常に重要です。
事業計画は開業後の経営の指針となるだけでなく、資金調達の際にも必要不可欠なものです。
ここでは、整骨院開業のための事業計画の立て方について解説します。
事業計画を立てるには、以下のステップを踏む必要があります。
- 自身の強みや特長を分析
- 提供するサービスや目標とする患者層を明確にする
- 競合他院の状況を調査し、自院の差別化ポイントを探す
これらを踏まえて、具体的な経営戦略を立てていくといいでしょう。
事業計画には以下の4点を盛り込みます。
- 収支計画
- 資金計画
- マーケティング戦略
- 人材育成計画など
特に、収支計画は事業の採算性を判断する重要な指標となるため、慎重に作成する必要があります。
また、事業計画は定期的に見直しを行い、必要に応じて修正を加えていくことが大切です。
自分で考えることが非常に重要です。最近では情報が溢れており、それを鵜呑みにしてしまうことも少なくありません。また、多くのコンサルタントがいますが、すべてを頼り切ったり、自分で状況を把握できていないと、後でうまくいかなくなります。開業の方法は千差万別であり、必要なポイントやバランスも異なります。様々な視点から何度も考え抜いた計画であれば、自信を持って進めることができます。特徴のない、ありきたりな開業で失敗しないようにしましょう。
事業計画書の書き方
事業計画書は、事業計画の内容を文書化したもので、主な構成要素は以下の通りです。
- 事業概要:事業の目的、提供するサービス、ターゲット顧客など
- 経営理念:整骨院経営に込める想いや理念
- 市場分析:競合他院の状況や、地域の人口動態、ニーズなど
- 経営戦略:差別化ポイントや、具体的な集客方法、価格設定など
- 収支計画:開業後3年から5年程度の収支見通し
- 資金計画:開業資金の調達方法や返済計画
- 組織体制:スタッフの構成や役割分担
- リスク分析:考えられるリスクとその対策
事業計画書は、簡潔かつ具体的に記載することが大切です。
特に、数値目標は根拠を示しながら、現実的な数字を設定するようにしましょう。
また、事業計画書は金融機関の融資審査でも重要な書類となるため、第三者に事業の概要や将来性が伝わるよう、丁寧に作成することが求められます。
綿密な事業計画を立て、それを事業計画書としてまとめることで、整骨院経営の指針を明確にし、安定した経営につなげることができるでしょう。
よくある事業計画の見本を見ると、整骨院や接骨院には適さないフォーマットもあります。どの項目にどの資料が必要かをあらかじめ整理してから、事業計画の作成に取りかかりましょう。特に、楽観的な見方だけでなく、批判的かつ厳しめに考えることが重要です。攻めと守りのバランスを意識してください。
事業計画書の書き方について記入例も解説!詳しくはこちら↓
資金調達の方法
整骨院の開業には、設備投資や運転資金など、一定の資金が必要となります。
円滑な開業資金の調達や適切な資金計画を立てることで、安定した経営につながるこということは言うまでもありません。
ここでは、整骨院開業における資金調達の方法について解説します。
資金調達の主な方法としては、以下のような方法があります。
- 自己資金
- 金融機関からの融資
- 公的助成金の活用など
自己資金は開業時の初期投資に充てる重要な資金源ですが、十分な自己資金を用意できない場合は、金融機関からの融資を検討することになります。
金融機関からの融資を受ける際は、事業計画書を作成し、事業の将来性や収支見通しを丁寧に説明する必要があります。
また、公的機関による助成金や補助金の活用も開業資金の調達に有効です。国や自治体によって様々な支援制度が用意されているため、積極的に情報収集を行いましょう。
確定申告や会計業務のために会計士や会計事務所に顧問を依頼する場合、資金調達のための資料作成やアドバイスを手伝ってもらえることがあります。また、融資のコツについても助言を受けられる場合があります。金融機関や市区町村など助成金の有益な情報を得られることもあります。自分の味方を増やすことを意識して取り組むと良いです。事業計画書の不足部分を指摘してもらえる場合もあるので、不安な場合は相談してみてください。
一般的な資金調達例
整骨院開業における一般的な資金調達の例を以下にご紹介します。
- 自己資金:貯蓄や親族からの借入れなど
- 金融機関からの融資:日本政策金融公庫の新創業融資制度や、民間金融機関の融資制度を活用
- リースの活用:設備や機器をリースで導入することで、初期投資を抑えることができる
- クラウドファンディング:インターネットを通じて、不特定多数の人から資金を調達する
- 公的助成金の活用:国や自治体による創業支援制度を活用する(例:創業補助金)
これらの資金調達方法を適切に組み合わせることで、開業に必要な資金を確保することができます。資金調達に当たっては、返済計画を綿密に立て、無理のない資金計画を組むことが重要です。また、資金繰りには常に注意を払い、収支バランスを考えながら経営を行うことが求められます。資金調達は開業の大きな壁となることもありますが、周到な準備と適切な計画により、その壁を乗り越えることができるはずです。
金融機関や支援機関とも積極的に相談を行い、最適な資金調達方法を見出していきましょう。
接骨院・整骨院の開業資金について詳しくはこちら↓
開業時に利用できる補助金・助成金
整骨院の開業時には、様々な補助金や助成金を活用することができます。
これらの制度を上手に利用することで、開業資金の負担を軽減し、円滑な開業を実現することができるでしょう。
ここでは、整骨院開業時に利用可能な主な補助金・助成金を紹介します。
地域創造的起業補助金
地域創造的起業補助金は、地域の課題解決や地域経済の活性化につながる事業を対象とした補助金で、地域の需要に応えるサービスを提供する整骨院の開業に適しています。
- 補助上限額:200万円
- 補助率:2/3
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を作成し、その計画に沿って行う販路開拓等の取り組みを支援する補助金です。
整骨院開業時の設備投資や広告宣伝費などに活用できます。
- 補助上限額50万円
- 補助率は2/3
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する経費の一部を補助する制度です。
整骨院の業務効率化や患者管理の IT化に活用できます。
- 補助上限額:50万円〜450万円(申請するITツールによって異なる)
- 補助率:1/2以内
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が行う革新的なサービス開発・試作品の開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援する補助金です。
整骨院の新たな施術サービスの開発や、施術の効率化に資する設備投資などに活用できます。
- 補助上限額は1,000万円
- 補助率は1/2以内
以上の補助金・助成金は、整骨院開業時の資金調達に大いに役立ちます。
ただし、補助金・助成金によって申請要件や利用条件が異なるため、それぞれの詳細を確認した上で、適切な制度を選択することが重要です。
また、申請にあたっては、事業計画書の作成や必要書類の準備など、一定の手続きが必要となります。
補助金・助成金を有効に活用することで、開業資金の負担を和らげ、事業の立ち上げをスムーズに進めることができるでしょう。
整骨院開業を目指す方は、これらの制度を積極的に検討し、有利な資金調達を図っていくことが望まれます。
開業で使える助成金・補助金の種類や申請方法についてもっと詳しく↓
医療機器の選定
整骨院開業時の医療機器選定は、施術の質と経営に大きな影響を与える重要な要素です。
機器選定の主なポイントは以下の通りです。
- 施術内容に適合した機器を選ぶ
- 機器の性能、品質、操作性、メンテナンス性を確認する
- 購入とリースのメリット・デメリットを比較し、導入コストを考慮する
- メーカーのアフターサービス体制を確認する
- 他院の導入実績を参考にする
医療機器は高額な投資となるため、長期的な視点に立ち、自院の経営方針に合致した機器を慎重に選定することが重要です。
十分な情報収集と検討を行い、自院に最適な機器を選ぶことで、円滑な開業と安定した経営につなげましょう。
開業時に多額の機器を導入することは、その後の資金運用に悪影響を及ぼすことがよくあります。機器が本当に必要か、またその投資に見合った効果が得られるかを慎重に検討することが重要です。さらに、トライアルでの使用やデモ機の借用が可能な場合もあるので、事前に確認しましょう。また、購入、リース、レンタルなどの契約内容にはそれぞれメリットとデメリットがありますので、最適な方法を選ぶようにしましょう。
接骨院で必要な機器の選び方や入手のコツを解説!詳しくはこちら↓
開業場所の選定
整骨院の開業場所は、集客や経営の面で大きな影響を及ぼす重要な要素です。
人通りの多い立地や、競合他院との距離、賃料などを総合的に考慮し、最適な開業場所を選定することが求められます。
開業場所の選定ポイントは以下の通りです。
- 周辺の人口動態や競合他院の状況を分析する
- アクセスの良い場所を選ぶ(駅近、主要道路沿いなど)
- 十分な広さと設備を備えた物件を選定する
- 賃料や初期費用を考慮し、経営計画に合った物件を選ぶ
- 物件の所有形態(賃貸、購入)を検討する
開業のための物件は、一度決めると変更が難しいため、慎重に選ぶ必要があります。毎日のように通うことになるため、物件の条件はもちろんですが、周辺の街の雰囲気や通勤の利便性なども幅広く考慮して契約を判断することが重要です。また、最近では契約後にオーナーチェンジがあり、取引先が変わるケースも増えています。これにより光熱費や管理費の大きな変動や、オーナー側とのコミュニケーションの問題などのリスクが生じることもあるため、慎重に物件を選んでください。
開業エリアの選定について開業経験者が解説!詳しくはこちら↓
レイアウト設計・工事
開業場所が決まったら、次はレイアウト設計と工事を行います。レイアウト設計では、待合スペース、施術室、受付、事務スペースなどを適切に配置し、動線や機能性を考慮した設計を行うことが重要です。レイアウト設計のポイントは以下の通りです。
- 患者さんの動線を考慮し、ストレスのない導線を設計する
- プライバシーに配慮した施術室の配置を行う
- バリアフリーに対応し、高齢者や障がい者にも配慮する
- 必要な設備(手洗い場、トイレ、更衣室など)を適切に配置する
- 将来的な拡張性も視野に入れた設計を行う
レイアウト設計が完了したら、工事業者を選定し施工を進めます。
この際、工事に入る前に保健所の担当者に事前相談をしておくようにしましょう。なぜなら、工事がうまく終了した場合でも、最後の立ち会いで物言いがついたらスムーズにいかないケースがあるためです。
工事では、電気、水道、ガスなどの設備工事や、内装工事、サインの設置などを行います。工事の際は、工程管理を適切に行い、計画通りに工事を進めることが重要です。
十分な検討と準備を行い、患者さんに快適な施術環境を提供できるよう、万全の体制で臨みましょう。
内容やレイアウトの決定には、同業者や家族、さらには異性や異なる年代の方々から意見をもらうことが重要です。開業する際には、自分の希望に沿った内装を選びがちですが、実際には幅広い年齢層のお客様が訪れるため、より多くの意見を集めることが大切です。
整骨院・接骨院開業申請手続き・必要な届け出
整骨院・接骨院の開業には、各種の申請手続きと届出が必要です。
これらの手続きは、法律で定められた要件を満たすために不可欠であり、開業準備の重要な一部となります。
開業申請の審査には一定の時間がかかるため、ある程度は余裕を持ったスケジュールを組むことができます。審査に必要な書類の準備や、事前の相談など、十分な準備と確認を行いましょう。
では以下に、主な申請手続きと届出を説明します。
開設届
整骨院・接骨院を開設する際は、開設届を管轄の保健所に提出する必要があります。
開設届には、開設者の情報、施術所の名称と所在地、施術管理者の氏名などを記載します。
受領委任取扱い契約の届出
健康保険の療養費を受領委任で取り扱うためには、地方厚生局への届出が必要です。
届出が受理されると、療養費の受領委任が可能になります。
共済組合・防衛省等への届出
共済組合や防衛省などの職域保険の療養費を取り扱う場合は、各組合や防衛省への届出が必要です。
労災保険指定医療機関への届出
労災保険の療養費を取り扱うためには、労働局への指定医療機関の申請が必要です。
指定を受けることで、労災保険の患者を受け入れることができます。
生活保護法等指定施術機関への届出
生活保護の施術費を取り扱うためには、指定施術機関の指定を受ける必要があります。
管轄の福祉事務所に申請を行いましょう。
税務署への届出
開業に伴い税務署への届出が必要です。
個人事業の開業等届出書を提出し、必要に応じて青色申告の承認申請を行います。
これらの申請手続きと届出は、整骨院・接骨院開業の重要なステップです。
書類の準備や手続きには時間がかかるため、十分な余裕を持ってスケジュールを立て、慌てないようにしましょう。
また、各手続きの詳細については、管轄の行政機関に確認し、適切に対応しなければなりません。
開業申請の手続きを滞りなく進めることで、スムーズな開業準備と、法令に基づいた適切な施術所運営を実現することができるでしょう。
開業までに必要な届け出と開業届について詳しくはこちら↓
整骨院・接骨院の広告・宣伝
整骨院・接骨院の開業後は、積極的な広告・宣伝活動を行い、地域住民への認知度を高めていくことが重要です。
効果的な広告・宣伝は、新規患者の獲得につながり、経営の安定化に大きく影響します。
整骨院・接骨院の広告・宣伝の主な方法は以下の通りです。
- ホームページの作成:施術内容や院の特徴を紹介、SEO記事など情報発信を行う
- チラシの配布:施術内容や割引情報などを盛り込んだチラシを作成し、ポスティングやラック設置などで配布する
- 看板の設置:施術所の存在を周知するために、デザインや設置場所を工夫して効果的なアピールを行う
- 広告掲載:地域の情報誌やタウン誌、新聞などに広告を掲載する
- SNSの活用:X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、TikTok、YouTubeなど
- 地域イベントへの参加:地域のお祭りやイベントに参加し施術所のPRを行いながら、地域住民との交流を深める
- Googleマイビジネスの利用:Googleの検索結果やマップ上に自店舗の情報が掲載されるようになる
広告・宣伝を行う際は、医療広告ガイドラインを遵守し、適切な表現を用いることが重要です。誇大広告や虚偽の表示は厳に慎み、患者さんに正確な情報を提供するよう心がけましょう。
また、広告・宣伝は一時的な集客ではなく、継続的な患者との関係構築を目指すことが大切です。
施術の質を高め、患者さんの満足度を上げることで、口コミによる新規患者の獲得にもつなげていくことができるでしょう。
集患は成功の可否を大きく左右する重要な要素です。そのため、開業準備の段階から意識的に取り組むことが望ましいです。近年はデジタルツールを活用した集患が増えていますが、整骨院や接骨院の分野では、紙のチラシや地域コミュニティとのつながり、そして人の紹介によるリアルな集患が特に効果的です。デジタルとリアルの両方のアプローチをうまく組み合わせ、それぞれの強みを活かすことで、失敗する確率を減らすことができます。
整骨院経営は厳しい?
開業した場合の年収について
整骨院を開業した場合の年収は、経営状況によって大きく異なります。
厳しい経営環境の中で高い収益を上げるためには、効果的な経営戦略と継続的な努力が必要とされます。
令和4年賃金構造基本統計調査によると、柔道整復師全体の平均年収は443.3万円となっています。
参考:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/173
この数字は雇われている柔道整復師も含めた全体の平均年収を示したものであり、開業した場合の年収とは異なります。
開業した場合の年収は、以下のような要因によって大きく左右されます。
- 立地条件:人口動態や競合他院の状況など、立地条件によって集客力が大きく変わる
- 施術の質:高度な施術技術と丁寧な対応は、患者満足度の向上とリピート率アップにつながる
- 経営能力:効果的な広告宣伝や適切な料金設定、スタッフ管理など、経営能力が収益に直結する
- 患者数:新規患者の獲得と再来率の向上が重要
- 費用管理:人件費や家賃、材料費など、支出の適切な管理が収益性を左右する
これらの要因を踏まえた適切な経営を行うことで、高い年収を得ることも可能です。
一方で、経営状況が思わしくない場合は、年収が平均以下になるリスクもあります。
また、保険請求の入金が遅い場合もあり、最大6ヶ月間かかることもあるため、開業して間もないときには注意が必要です。
整骨院経営は、その収益性の高さから魅力的に映る一方で、リスクも伴う難しい面があるのが実情です。開業にあたっては、自身の技術力や経営能力を冷静に見極め、十分な準備と計画を行うことが重要です。
開業を目指す方は、リスクを認識しつつも、可能性に挑戦していくことが求められます。
近年の健康意識の高まりにより、整骨院や接骨院を求める人は確実に存在します。しかし、同じ領域でビジネスを展開している施設も増えているのが現実です。集患につながる事業モデルや、採用を効果的に進められる院の特徴には独自性が必要です。売上と固定費の収支をどのように管理するかを事業計画で計算し、予想することで、自分の収入もある程度把握することができます。
まとめ
整骨院・接骨院の開業は、柔道整復師にとって大きな夢であり、やりがいのある仕事です。一方で、開業には様々な準備と手続きが必要であり、経営上のリスクも伴います。
開業を成功させるためには、綿密な事業計画の立案、適切な資金調達、最適な開業場所の選定、必要な医療機器の導入、開業申請手続きの円滑な進行が不可欠です。
開業後は、効果的な広告・宣伝活動を行い、地域住民の信頼を獲得していくことが重要です。
開業を目指す柔道整復師は、自身の技術力と経営能力を見極め、周到な準備と計画的な運営を心がける必要があります。
また開業すると、高い収益性が期待できる反面、経営状況によって年収が大きく変動するリスクがあります。適切な経営戦略と継続的な努力が求められます。
困難な面もありますが、その先にある成功の可能性を信じ、地域医療に貢献していくことが期待されます。
整骨院・接骨院の開業は、リスクを伴う挑戦ですが、十分な準備と適切な経営により、安定した収益と高いモチベーションを維持し、地域に愛される施術所を築いていくことができるでしょう。
監修者プロフィール
- 大学卒業後、東京医療専門学校に進学。鍼灸マッサージ師、柔道整復師の国家資格を取得。整骨院や整形外科などの医療機関にて臨床現場を経験し、その後カナダ・トロントへ留学。現地治療院にて臨床を経験し、帰国後、麻布十番に治療院を開業。
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