【監修者】
岩井 隆浩(麻布十番ループル治療院 創業者)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師
齋木 拓 (麻布十番ループル治療院)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
接骨院や整骨院で働いている人の中には「将来独立したいけど資金面が不安」と考える方も多くいます。個人院の開業に当たって、開業資金は大きな壁ではないでしょうか。
本記事では、開業資金の相場や開業資金で使える融資、開業資金を抑えるポイントを分かりやすく解説します。
開業する店舗のスタイルによりますが、整骨院の開業時には100万円〜1000万円程度の開業資金が必要になります。今回は、その一例をご紹介します。
開業にかかる費用の概算を知り、開業時の参考にしてください。
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接骨院・整骨院の開業資金は2つ
接骨院・整骨院の開業資金には、大きく分けて初期費用と運転費用の2つがあります。ここではそれぞれの項目でかかる費用の概要をご紹介します。開業する接骨院のどこに力を入れるか、また物件や備品の購入方法によっても費用は大きく変動します。
初期費用
イニシャルコストとも呼ばれる初期費用は、店舗の開店に必要な準備金を指します。初期費用は大きく分けて以下の3つに分類されます。ここでは、それぞれに含まれる内容と相場をご紹介します。
物件取得費
物件取得費とは、物件を借りるのにかかる費用で、敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料などが含まれます。開業するエリアや広さによって費用は大きく変動しますが、100〜150万円程度が目安です。多くの場合、物件を借りる際にこれらの費用をまとめて払わなければなりません。
内装工事費
内装工事費とは、壁や天井の張り替えなどにかかる費用で、200〜500万円程度です。借りた際の物件の状態やこだわりで費用に大きな差が生じます。
家賃が安くても、内装工事費にお金がかかれば初期費用はかさみます。内装工事費を少しでも抑えたい方は、居抜き物件を探すと良いでしょう。居抜き物件については、記事後半で詳しく解説しています。
設備費
設備費の一般的な費用は200〜300万円です。設備費には、機器やベッドなどの費用が含まれます。取り扱う施術によって使用する機器も変わり、設備費も変わります。お客様の満足度に直結する部分ですので、予算は多めに組み、納得できる設備を契約しましょう。予算内で購入するのが難しい場合は、中古購入やリース契約も検討してください。
運転資金
運転資金とは、実際に開業してから事業を維持するためにかかる資金です。平均して毎月50〜80万円程度かかると言われます。初期費用とは違い、毎月発生する費用である運転資金。毎月かかるお金は想像以上に多いものです。「気づいたら資金が底をついていた」という事態に陥らないよう事前に理解、準備をしてください。
家賃
家賃は、テナント費用の他に駐車場費用も含まれます。接骨院の規模やエリアによって変動がある部分なので、自分が開業したいエリアの物件相場を参考に考えましょう。
人件費
人件費は、スタッフに支払う給与や社会保険料、各種手当にかかる費用です。接骨院の規模が大きくなるほど、人件費も高くなります。接骨院の規模とスタッフ人数のバランスを考えた雇用が求められます。
消耗品費
消耗品費は、施術に使うタオルやテーピングなどにかかる費用です。
水道光熱費
水道光熱費は電気・水道・ガスにかかる費用です。水道光熱費も接骨院の面積によって変わり、面積が広いほど電気代は高くなります。
広告・宣伝費
広告・宣伝費は、宣伝にかかる費用です。せっかく接骨院をオープンしても、宣伝をしないとお客様に店舗の存在や魅力が伝わりません。接骨院のHPを作成する場合、簡単なものであれば30〜50万円程度、ブランディングをしっかり行う場合は80〜200万円程度が相場と言われます。予算を抑えたい方は、自分でチラシを作成したり、ブログ開設、SNS更新を行うのがおすすめです。広告や宣伝にかかるお金は費用対効果を意識し、新規顧客の獲得を行いましょう。
開業資金の初期費用相場
実際に接骨院・整骨院を開業する際にかかる初期費用は、500〜950万円程度と高額です。整骨院で働く正社員の平均年収は約381万円であることを考えると、開業資金を集めるのは簡単ではありません。
初期費用にはかなり幅がありますが、物件の状態や使用する機器の購入先によって価格は大きく変わります。ここでは初期費用の内訳目安をお伝えします。
物件取得費
物件取得費とは、物件を借りるために必要な費用です。仲介業者を通して物件を借りる多くの場合、家賃・敷金・礼金・補償金・仲介手数料をまとめて支払わなければなりません。敷金、礼金、仲介手数料は家賃を基準に決められることが多く、賃料が上がれば初期費用も比例して高くなります。そのため一概に相場をいうことはできません。
例として、前払い家賃・敷金・礼金・補償金・仲介手数料それぞれが家賃1ヶ月分かかる、月25万円のテナントを借りた際の物件取得費は〈25万円×5=125万円〉です。
内装工事費
内装工事にかかる費用は一般的に200〜500万円程度が一般的です。しかし、借りる店舗が空テナント(スケルトン)、居抜き物件、他業種の仕様など、どのタイプであるかによって、内装工事費は大きく変わります。
最も費用を安く抑えられるのは居抜き物件ですが、最低限の工事は必要なので、最低でも100万円はかかるでしょう。
設備費
新品の機器を購入するか、中古機器を購入するか、リース契約をするかで、設備費は変わります。医療機器やレセプトコンピュータなどは非常に高額です。接骨院の規模や使用機器によって費用は変わりますが、最低でも200〜300万円はかかる見通しを立てておきましょう。
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開業資金で使える融資一覧
接骨院・整骨院の開業には高額な資金が必要です。計画的に貯蓄をしている方でも、自己資金だけで開業費用を賄うのは難しいでしょう。
ここでは、開業資金を集めるための資金調達方法をご紹介します。
公的融資:日本政策金融公庫
融資を受けたいと考える時、まず検討したいのが公的機関の日本政策金融公庫です。
日本公庫は、「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨としつつ、国の中小企業・小規模事業者政策や農林漁業政策に基づき、法律や予算で決められた範囲で金融機能を発揮している政策金融機関です。
(引用元:日本政策金融公庫)
民間の借入先に比べて審査は厳しくないですが、あくまで融資なので借入の際は計画作成が必要です。フリーダイヤルの相談窓口もありますので、融資を考えている方は一度相談すると良いでしょう。
民間融資:銀行や信用金庫
銀行や信用金庫などの民間機関からも、融資を受けられます。しかし公的融資に比べて審査は厳しく、申し込んで必ず借りられる訳ではありません。
そこで活用したいのが信用保証協会付融資です。
「信用保証協会」は、中小企業・小規模事業者の皆さまが金融機関から「事業資金」を調達する際に、保証人となって融資を受けやすくなるようサポートする公的機関です。
全国各地に信用保証協会があり、各地域に密着して業務を行っています。
(引用:一般社団法人 全国信用保証協会連合会)
銀行で申し込み、審査をクリアすると1ヶ月程度で融資を受けられます。
親族からの融資
親族が金銭的に余裕のある場合、無利子で融資を受けられる方もいるかもしれません。親族から融資を受ける場合、贈与(返済なし)と借入(返済あり)の2パターンが考えられます。もし贈与(返済なし)で、贈与額が年110万円を超えると贈与税を払わなければならないので注意してください。借入(返済あり)の場合は、親戚間のトラブルを避けるために返済できる額の融資を受けましょう。
開業資金を抑えるポイント
接骨院・整骨院の開業には、多額の資金が必要です。できる限り安く抑えるためには以下2つを意識してください。場合によっては、開業資金を大幅に削減できます。
居抜き物件の活用
居抜き物件は、以前に営業していた接骨院・整骨院の設備や内装が残っている物件のことです。内装工事費を抑えられるだけでなく、工事に時間を取られない点もメリットです。
居抜き物件は、借主から売主に譲渡金を支払わなければなりません。内装工事費は抑えられても、譲渡金が高ければ費用は抑えられないので、譲渡金をいかに抑えるかがポイントです。
譲渡金が高額でない居抜き物件を借りれば、開業資金を大幅に抑えられます。
中古・リースで機材を導入
開業資金の中でも、機器代は大きな割合を占めます。開業資金を抑えるには、機器を中古で購入したり、リースで導入するのがおすすめです。リースは、新機種への乗り換えがしやすい一方で、長期間使用すると、購入するより高くつく可能性もあります。
接骨院・整骨院の開業資金は高いが抑えることは可能
接骨院・整骨院の開業には1,000万円程度の高額な資金が必要です。しかし融資の仕組みや安く抑える方法を知れば、開業も夢ではありません。
本記事でご紹介した内容は一例です。小規模にマンションの一室であれば200万円、物療などなく中規模で500万円程度で、開業されている方もいらっしゃいます。
理想の接骨院のスタイルに合わせてご検討ください。下準備や情報収集を念入りに行い、開業の準備を進めましょう。
監修者プロフィール
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