【本記事の監修者】
岩井 隆浩(麻布十番ループル治療院 創業者)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師
齋木 拓 (麻布十番ループル治療院)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
鍼灸院を開業したい!独立したい!そう考えていませんか?
資格を取ったらいつかは開業したいと思うのは当然のことです。
しかし、実際に開業する!となったらわからないことや不安もあると思います。
そこで、この記事では鍼灸院の開業方法をわかりやすく解説していきます。
ポイントはとにかく”準備が大事”ということです。
では、進めていきましょう。
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目次
鍼灸院の開業向けた”準備と心構え”
鍼灸師になると決めて専門学校を目指した時に、いつかは開業と思いませんでしたか?
開業できるという部分に魅力を感じて資格取得をした人も少なくないと思います。
学校を卒業して資格を取得したら働き始めます。
そうするといつ開業するのだろうと考えるものです。
次に、どうやったら開業できるのか?と思うのではないでしょうか?
ズバリ、開業に必要なことは、”準備と心構え”を開業前に整えておくこと。
これに尽きると思います。
勤務時代から、独立するときに足りないものはこの2つが大きな要因となるからです。
逆に学生時代や勤務時代から、意識していれば学び方や働き方も変わります。
また、物件や必要なベットなどはお金を払えば揃いますが、顧客や技術はお金だけではどうにもなりません。常に開業をイメージしておきながら開業前から準備をしておくのです。
そして開業してから不安になる理由は、集客やお金の問題がほとんどです。
しっかり準備をしておけばこの不安が解消されるだけでなく、開業もうまくいきます。
開業準備は、専門学校や勤務時代から始まっていると考えると良いでしょう。
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鍼灸院の開業資金はいくら必要?
調達方法や助成金を紹介
鍼灸院を開業する場合にいくらかかるかイメージできますでしょうか?
開業方法にもよりますが、イメージしている業態に必要な資金を用意する必要があります。
およそどれくらいの予算がかかるのか、どんな調達方法があるか紹介していきます。
鍼灸院の開業に必要な資金はいくら?
一般的に、鍼灸院を開業するには300万〜600万円の資金が必要です。
必要な資金の内訳については、次項で解説します。
参考にしてみてください。
テナント費用
立地場所や施術スペースの広さによりますが、テナント費用にはおおよそ30万円から300万円程度の費用がかかります。
契約の際には、家賃以外に礼金、敷金、保証金、仲介手数料などの追加費用が発生します。
普段からイメージしている物件の相場をチェックしておくと良いでしょう。
施術機器や器具費用
鍼灸院では施術に使用するベットや治療機器、消毒機材、設備が必要になります。
治療院の価値を発揮する部分であり、患者さんに直接関わる部分です。慎重に検討するようにしましょう。
治療機器は購入以外にレンタルやリースもあります。
いきなり購入せず複数の見積もりを取るようにしましょう。
会社によってはデモ機を借りることも可能です。
こちらの費用は、おおよそ30万〜100万円程度かかるでしょう。
宣伝広告費
開業を成功させるには集客が必須となります。
開業時は知名度や認知度も低いので、多くの人々に存在を知ってもらうことが重要です。
ホームページの作成や、チラシなどの広告費、看板設置費など多くの費用がかかります。
費用としては、30万〜100万円程度です。
システム費用
鍼灸院に来院される顧客層も近年は非常に多様化しています。
また、鍼灸院は接骨院やマッサージ院、リラクゼーションや整体サロンなどとも比較されます。
その時にすぐに予約できるシステムや事前のデジタル問診票、決済に便利な会計システムなどが今後
鍼灸院を運営をするうえで必須になることでしょう。導入する場合は、10万〜100万円の費用がかかります。
コンセプトに合うシステムを導入するようにしましょう。
鍼灸院の開業に必要な資金の調達方法とは?
鍼灸院を開業する時にイメージした院を作るための予算が必ずあります。
スタート時に必要なだけの資金がなくては開業しても成功することができません。
そんな時の為に、必要な資金を調達するための方法を紹介していきます。
日本政策金融金庫
国が出資する公的融資です。民間融資とは異なり、融資のハードルが低く、低金利で長期的な融資が受けやすいのが特徴になります。
また、連帯保証人や担保が不要である点がメリットと言えるでしょう。
融資を受けるためには、創業計画書を提出し、自院の経営方針や理念などを明らかにしなければなりません。
また借入の2分の1〜3分の1の自己資金が必要となります。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では0.88~3.25%の年利で借入することが可能です。
参照元:日本政策金融公庫「新創業融資制度」
親族からの支援を受ける
最も簡単かつ手間の掛からない調達方法になります。
しかし、注意すべき点は、一定額を超えた場合に贈与税の対象になる点です。
借入時の自己資金に当てる場合など、特に注意が必要です。
必要な資金を集めることも大切ですが、思いがけず課税される場合もあるので気をつけてください。
鍼灸院の開業時に利用できる補助金とは?
鍼灸院が開業時に利用できる補助金の事例を紹介していきます。
開業時の補助金申請の際にぜひご活用してみてください。
小規模事業者持続化補助金
販路拡大・開拓に必要な費用を一部補助する補助金制度です。
対象者は、具体的な対策を行う小規模事業者です。
もしくは、商工会議所にて事業を営む小規模事業者になります。
補助金の種類は「一般型」と「コロナ型」の2つです。
一般型では、150万円を上限とし、補助対象費用の3分の2が支給されます。
コロナ型では、以下の条件に合致する方が対象です。
テレワーク環境を整備している
オンラインビジネスモデルへ転換している
サプライチェーン毀損への対応ができる
条件を満たすことで、100万円を上限とし(事業再開枠では150万円、特例事業者では200万円が上限)、補助対象費用の3分の2または4分の3が支給されます。
鍼灸院を開業したときの年収はいくら?
鍼灸院の業界を取り巻く環境は変化が激しく、進化も早くなってきています。
ここでは鍼灸院業界の年収や実情について解説していきます。
鍼灸院業界の年収
鍼灸院を開業した場合の年収は400万円〜600万円程度と言われています。
開業1年目から繁盛している場合で、上記の年収レンジが相場となるでしょう。
勤務の鍼灸師よりは比較的高い年収と言えます。
しかしながら、開業にはリスクも付き物です。
集客ができないと院は成り立たないので想定する年収を得るにはどれくらいの施術数が必要なのか、逆算して把握しておくと良いでしょう。
鍼灸師の中には、年収1000万円以上を稼ぐ鍼灸師も存在しており、決して珍しくはありません。
それ以上を稼ぐ鍼灸師も多数存在しています。
鍼灸院業界の実情
鍼灸院を開業したものの、経営が安定せずに廃業を決断される人も少なくありません。
その要因としては、経営知識やマーケティング不足によるものが大きいでしょう。
冒頭にもお伝えしたように、開業を成功させるための準備は、施術だけでなく経営のための知識や集客方法なども知る必要があるのです。
どんなに施術スキルが高くても、安定経営のためのノウハウを持っていなければ鍼灸院を存続させることは不可能です。
鍼灸院として生計を立てていくためには、経営知識やマーケティングの知識が必須と言えるでしょう。
稼げる鍼灸院にするための集客のポイントは?
鍼灸院を収益性の高いものに育てるためには、自身のコンセプトに合った集客戦略を確立することが不可欠です。
以下に、成功に不可欠な6つの方法を紹介します。
ポイントは、これらを効果的に組み合わせて活用することで、成果を最大化できることです。
MEO対策(Googleマイビジネス)を鍛える
MEOとはMap Engine Optimizationの頭文字をとったもので「マップエンジン最適化」のことです。マップエンジンとは、Googleマップを指しています。
MEO対策とは、Googleマップ上で検索結果が上位表示されるための対策のことです。
たとえば「○○市 鍼灸院」と検索した際、Googleマップと一緒に自院の名前が上位表示されることを指します。
上手く活用することで患者の目に留まり、サイトを閲覧してくれる可能性があるのです。
患者に興味を持ってもらえれば、そこから集客に繋がります。
Googleマップ上で自院を表示させるためには、Googleビジネスプロフィールに登録する必要があります。
登録すると、自院に関する患者の口コミが登録できるようになります。
患者の良い口コミが増えるほど、集客効果が見込めます。
写真やメニュー、開院時間、定休日、鍼灸院の特徴や強みなども丁寧に掲載しましょう。
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チラシ・ポスティングの効果を知る
自院の特色や施術メニューなどを簡単にまとめたチラシをポスティングすることで集客効果が得られるでしょう。
ネット検索では集客できない層の認知拡大にも効果的です。
チラシによる施策も継続することが大切です。
専門のポスティング業者に委託し、周辺地域にチラシをポスティングできる仕組みを作るのも効果的です。
開院当初は土地のエリアを詳しく知り尽くすために自分で配ることも必要です。
ポータルサイトの掲載は差別化を意識する
ホットペッパーやエキテン、EPARKといったポータルサイトに登録することによって、集客効果が見込めます。
ポータルサイトによっては、さまざまな鍼灸院を比較参照できる機能があったり、多くの口コミを参照できる機能があります。
競合の鍼灸院と差別化できるポイントをアピールできる状態にしておきましょう。
ポータルサイトに登録した上で良い口コミが獲得できれば、多くの方に認知され、集客が期待されるのです。有効活用していきましょう。
予約が取れるサイトであれば、予約空き枠を作るようにしましょう。
ホームページ制作をやりきる
患者は鍼灸院に来る前に、ホームページを確認してから来院するケースが多いです。
そのため、ホームページ作成は集客する上で必要不可欠になります。
ホームページ内に自院の施術メニューやスタッフ紹介の内容、自院ならではの特色を入れておくことで、集客効果が期待できるのです。
「この鍼灸院に行きたい」と患者が思えるような内容を織り交ぜてホームページを作成しましょう。
掲載するテキスト情報が豊富に用意してあると広報活動がよりスムーズになります。
SNSの活用で見込み客を増やす
現在は多くの患者がInstagramを通じて来院を検討しています。さらに、Twitter、Facebook、YouTubeなどのソーシャルメディアを通じて情報収集を行う患者も増加しています。
そのため、自身の鍼灸院情報をSNSを通じて発信することは、患者に自院の存在を効果的にアピールする手段となります。
各SNSプラットフォームは異なる特性を持っており、それに応じたアプローチが求められますので、適切な表現を各サービスに取り入れることが重要です。
WEB広告を駆使する
WEB広告とは、GoogleやFacebookなどで検索した際に、ページ上部に出てくる広告のことです。
現在ではリスティング広告が主流と言えるでしょう。検索ページの上部に表示されるため、目立ちやすくなります。
広告する際は、誇大広告や NGワード、品位を損ねる広告を行うと規制対象となるので十分に配慮しておきましょう。開業する土地のエリアで鍼灸に関する検索をしてみましょう。
WEB広告をしたら、費用と来院数で顧客の獲得単価がわかります。重要な指標になるので、データを管理して分析できるようにしておくと良いでしょう。
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鍼灸院に必要な準備とは?
申請手続きや注意点も紹介
鍼灸院を開業する際には、数々の準備が不可欠です。
開業までの手続きや必要な申請について、詳しく紹介していきます。
これらの情報を活用し、開業に備えてください。
鍼灸院開業前に必要な備品・機器などを準備する
鍼灸院開業前には主に以下の備品・機器などが必要です。
これらは鍼灸院を開業する上で最低限必要な内容です。漏れなく準備しておきましょう。
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鍼灸院の名称はどうやって決める?
鍼灸院を開業する際には、適切な名称を選定する必要があります。
名称は頻繁に変更されるものではないため、慎重に考えましょう。
また、患者に誤解を与えないような名称を選ぶことが重要です。一部の名称は魅力的に見えるかもしれませんが、実際に何を提供する場所なのかがわからないという印象を与えかねません。
理解しやすい名称を選ぶことも大切です。
なお、以下の内容に該当する名称は使用が禁止されていますので、これに留意しましょう。
・「鍼灸医」などの「医」を含む名称
・「はり科」や「きゅう科」などの「科」を含む名称
・病院や診療所と思われる名称
このような言い回しや表現は NGです。
申請時にも気をつけて登録するとよいでしょう。
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管轄する保健所へ事前相談に行く
鍼灸院開業にあたり、開業予定地を管轄する保健所に行きましょう。
保健所では以下の内容を確認する必要があります。
提出するべき書類
施術所に必要な設備や構造条件
施術所の名称に関する注意点
これらには細かい規定があります。必ず事前の確認をしておきましょう。
開設届けに必要な書類を確認する
鍼灸院を開業するには開設届けが必要です。
提出用と控え用の2部を準備する必要があります。
また、開設届けを提出するにあたり、必要な書類があります。
主な書類は以下の通りです。
- 業務を行う施術者の免許証の原本とコピー
- 施術所平面図(待合室や施術室の面積、施術用器具や消毒設備の配置場所、換気扇や外気開放部分の位置を記す必要があります)
- 保健所から施術所への地図(最寄り駅からの交通経路や距離、目印などを記載する必要があります)
- 開設者が法人の場合、定款のコピー及び登記標本(発行より6ヶ月以内のものに限る)
上記が準備できたら、開設届と一緒に保健所に提出しましょう。
なお、開設届は施術所を開設してから10日以内の提出が義務付けられています。
万が一、10日を過ぎる場合は、遅延理由書の提出が必要になるため、注意しておきましょう。
現地調査確認を受ける
開設届けが受理されると、受理されてから7〜10開庁日を目安に保健所職員が施術所へ訪問し、現地確認を行います。
保健所職員が現地で確認する内容は下記の通りです。
防犯対策
個人情報の保護対策を行っているかを確認します。
また、施術所の防犯対策としてセキュリティシステムを導入しているかも確認されるでしょう。
広告
院内の掲示物や看板などを確認し、広告規制に反した内容になっていないかを確認します。
たとえば、「◯◯に効く鍼治療」や「〇〇式鍼灸」といった広告は認められません。
また、施術者の技能や経歴に関する記載もできないため、注意が必要です。
誇大広告や紛らわしい広告を含まないよう、気をつけて広告しましょう。
廃棄物
一般廃棄物や感染性廃棄物の分別が安全に行われているかを確認します。
また廃棄処理の委託先についても確認されるでしょう。
加えて鍼の管理が安全になされているかもチェックポイントとなります。
防火措置
防火対策が適切かどうかを確認されます。
具体的には、消化器などの消火器具や機材の配置がなされているかを確認されるでしょう。
構造設備基準の規定を満たしているか
施術所内の部屋全てにおいて、面積や消毒設備が適切かどうかを確認します。
鍼灸院開業時の建物の構造設備の基準
鍼灸院で施術を行うためには、適切な施設と設備が必要です。
設備を整えるための基準として「構造設備基準」が設けられています。
具体的な内容は下記の通りです。
- 無資格者による施術を防ぐために、施術者1人につき、1台の施術台が望ましい
- 衛生上必要な措置を施し、常に清潔感を保ち、採光や証明及び換気が十分に行える
- 施術に用いる器具や手指消毒のための設備が整っている
- 施術室は部屋面積の7分の1以上に相当する部分が外気に開放可能である(もしくは換気装置がある)
- 3.3平方メートル以上の待合室がある
- 6.6平方メートル以上の専用施術室がある(他の部屋と壁もしくはパーテーションなどで区切り、扉を設置する必要がある)
まとめ
今回は鍼灸院を開業するまでの流れや手続き、開業資金や助成金について解説しました。
鍼灸院を取り巻く環境は日々変化しています。
鍼灸院として生き残るためには、経営知識に加えマーケティング力が必要となるでしょう。
鍼灸院開業にあたっては施設基準を満たし、適切な書類を保健所へ提出する必要があります。
漏れなく準備を行いましょう。
スムーズに開業するためにも、助成金を活用し、開業後の集客方法を知識として知っておく必要があります。
良い開業のスタートが切れるよう万全の準備を整えておきましょう。
監修者プロフィール
- 大学卒業後、東京医療専門学校に進学。鍼灸マッサージ師、柔道整復師の国家資格を取得。整骨院や整形外科などの医療機関にて臨床現場を経験し、その後カナダ・トロントへ留学。現地治療院にて臨床を経験し、帰国後、麻布十番に治療院を開業。
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