【監修者】
岩井 隆浩(麻布十番ループル治療院 創業者)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師
齋木 拓 (麻布十番ループル治療院)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
自宅での開業を考えていませんか?
治療院(接骨院)を自宅開業をするにあたって、どのようなメリットがあるか、またデメリットは何か気になるものです。自宅開業には、重要なポイントがいくつかあります。
この記事では、自宅開業をする際のメリット・デメリットを解説するとともに、自宅開業を成功させるポイントを解説します。記事を読むと、治療院(接骨院)を自宅開業するコツがわかるため、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
自宅開業をするメリット5選
自宅開業をする主なメリットは、以下の5つです。
- 物件の費用が安くおさえられる
- 通勤が楽で時間がかからない
- 内装費などの経費削減ができる
- 急患にも対応できる
- プライベートとの両立がしやすい
それぞれ順番に解説します。
物件の費用が安くおさえられる
自宅開業をするメリットは、テナントの家賃が別にかからないことです。
ちなみにテナントの家賃は平均して10万円前後、都市部や人気のエリアだと1.5倍〜2倍かかります。自宅の一部を施術スペースにするため、ちょうど良いテナントを探す手間が省けます。物件費用は家賃に限らず、共益費・管理費や仲介手数料・保険料もあります。これらの支払いがないので、初期費用の大きな削減が可能です。
通勤時間が削減できる
自宅開業では、通勤時間が削減できます。居住スペースと施術スペースが同一ということが多いため、通勤は最小限ですむでしょう。これまで通勤に時間をかけていた場合、通勤に使っていた時間を自分や家族のために使うことが可能です。
また、休憩時間に家のことを済ませるといった時間の使い方も実現します。同じ敷地内に職場があるため、車通勤時の渋滞や電車の遅延による通勤ストレスから解放されるメリットがあります。
工事費をおさえられる
自宅で治療院を開業する場合、工事費を抑えられる可能性があります。柔道整復師法施行規則十八条には以下のように規定されています。
(施術所の構造設備基準)
第十八条 法第二十条第一項の厚生労働省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 六・六平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
二 三・三平方メートル以上の待合室を有すること。
三 施術室は、室面積の七分の一以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない。
四 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。
引用元:柔道整復師法施行規則十八条
施術室、待合室ともに広さの制限がありますが、条件をクリアしていれば、十分な広さを確保できないテナントを契約する場合と比較して、工事費用を削減することが可能です。
急患にも対応できる
自宅開業すると急患対応がしやすいのもメリットです。居住スペースと施術スペースが近いため、患者さんから要請があった場合、すぐに対応できるからです。患者さんを待たせないことは治療院の良い口コミや評価につながります。自宅開業はテナントを借りて開業することに比べ、集客しにくいことがあり、良い評判を集めることは、収益を確保する上で重要です。
プライベートとの両立がしやすい
自宅で開業すると、プライベートとの両立がしやすくなります。特に子育て世代では、子供の近くで働くことが可能になり、面倒をみやすくなります。
また、子供に自分の働く姿を見せることも可能です。
このように、さまざまなライフスタイルに応用可能なのが自宅開業の魅力です。仕事が終わった後も通勤時間なく帰宅できるため、人によってはメリットと感じるでしょう。
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接骨院は自宅開業できる
治療院(接骨院)は自宅開業ができます。自宅開業するには、事業における開業届を提出する必要があります。柔道整復師などの資格を利用した接骨院を開業する場合には、施術所の開設届も必要です。
この章では、開業届と開設届・そのほかの申請・届出について説明します。
開業届を提出
自宅で開業し、個人事業主として接骨院を営業する場合、開業届の提出が望ましいです。開業届は、事業規模や継続性の観点から、必ずしも必要ではありませんが、提出するメリットは以下の通りです。
- 青色申告することで最大65万円の控除が受けられる
- 治療院名義(屋号)の銀行口座が作れる
- 個人事業主の証明になる
- 小規模企業共済に加入できる
青色申告は、複式簿記での記載、e-Taxなどでの申請による諸条件はありますが、最大で65万円の特別控除が受けられます。
また、赤字を3年間繰り越したり、治療院で使用する機器の減価償却にも役立ったりします。
治療院名義で銀行口座を作ることができます。口座を利用した取引上、治療院事業をしていると客観的に判断できるため個人の口座よりも信用面で有利です。
小規模企業共済とは、中小企業の経営者向けの退職金制度です。この制度に加入すると節税効果を使いながら、毎月掛金を積み立てることで廃業時や退職時に受け取ることができます。
治療院を自宅で開業する場合、事業として継続性と営利目的の施術を繰り返し行うことからも開業届の提出が望ましいといえます。
開業までに必要な届け出と開業届について詳しく解説!詳しくはこちら↓
接骨院・鍼灸院は届出も必要
届出や申請は決して難しくありません。接骨院・鍼灸院を開業する場合、開設届が必要です。
また、治療院開設にあたり、接骨院は柔道整復師の資格、鍼灸院ははり・灸師の資格が必要です。
その他に必要な届出は以下の通りです。
- 受領委任取扱い契約の届出
- 共済組合・防衛省等への届出
- 労災保険指定医療機関への届出
- 生活保護法等指定施術機関への届出
- 税務署への届出
重要なのは、各自治体や申請先の担当者に相談しておくことです。
これをしっかりと意識しておくことで必ずスムーズに進みます。届出先が異なるため、事前に調べてから届出を行うことが必要です。
自宅開業成功ポイント
自宅開業には成功のポイントがあります。テナントを借りて開業する場合やチェーン店に比べて不利になることが多いため、以下に注意すると良いです。
- 集客に力を入れる
- 生活感を出さない
- 自己研鑽を怠らない
各ポイントを整理しながら解説します。
集客に力を入れる
自宅開業では集客に力を入れることが大切です。理由は立地と治療院の外観がテナント店舗と比べて不利になりやすいからです。テナント店舗は駅前や商業施設の近くなど、人通りの多いところに開業でき、さらにお洒落な外観にするといった工夫も可能です。
一方自宅開業では自宅のある住宅地かつ外観も一般的な住宅ということが多く、SNSを使用した集客、看板を出すなどの工夫が求められます。予約が成立した時にメールなどで治療院までの道順をPDFで送るなどの対策も、アクセスしやすくなるため効果的です。外観で勝負がしにくいので、内装や写真のクオリティを高めることが重要です。清潔感や安心感を感じてくれる写真素材を選びましょう。
生活感を出さない
施術室・待合室は患者さんの目にふれる場所のため、生活感を出さないことがポイントです。施術者にとっては自宅ですが、患者さんにとっては治療院です。
このため、居住スペースとは区別する必要があります。
例えば、施術に関係のないものは置かない・患者さんがリラックスできるBGMを流すことや清潔感のある芳香剤を置くなどの対応があります。
さらに、施術中は掃除機など音の大きい家電の使用や生活音も控えましょう。施術中は患者さんに、施術に集中してもらうためです。
自己研鑽を怠らない
自宅開業し、一人で患者応対を行うと、治療家として孤立する場合があります。チェーン店で働いたことがあれば、集団研修の案内を目にする機会が多かったかもしれません。
一方、自宅開業を含めた個人での開業は、接客や施術内容の研修は自分で情報収集して、さらに時間を作って参加しなければなりません。
また、専門学校時代の同級生や、元職場の仲間たちとの連絡も意識的に実施しましょう。最新の施術内容やトレンドを学ぶ事は経営を続ける上で必要不可欠なので、スケジュール管理をして自己研鑽を怠らないようにしましょう。
自宅開業で必要なもの
自宅開業で必要なものは、必須なものと用意した方が良いものに分かれます。用意した方が良いものは、開業してからでも、様子を見ながら準備できるため、最低限、必須なものを揃えるようにしましょう。
必須なもの
自宅開業で必須なものは、以下の7つです。
ひとつずつチェックしてどのように揃えるか意識してみましょう。
- 看板:デザインをどう作るか考えましょう。
- 施術をするベッド:高さや素材、色味などから選択しましょう。
- タオル:施術にあったサイズや素材を選びましょう。
- 枕:患者さんの気持ちになって選びましょう。
- シーツ:寝心地とコストのバランスを考えましょう。
- 問診票:デジタル問診票を使うと便利です。誰が来るかわかるので安心です。
- 領収書:支払いを証明するために必ず必要です。
施術をするベッドなど、発注してから納品まで2週間以上の時間がかかるものがあるため、納品までの時間を確認してから早めに注文しましょう。
用意した方がよいもの
自宅開業で用意した方がよいものは、施術周りに必要なものと治療院の室内環境に分けられます。
施術周りに必要なものの一例は以下の通りです。
- 患者さんの着替え
- 荷物入れ、スリッパ
- ユニフォーム
治療院の運営に必要なものが多く、開業までに揃えることが望ましいでしょう。リストアップするとぬけ漏れがなくなります。
また、治療院の室内環境作りも大切なので、待合室の環境にも気を配る必要があります。
例えば、以下のようなイメージです。
- カーテン
- 観葉植物
- BGM
- ウォーターサーバー
上記は開業してからでも揃えることが可能です。治療院の雰囲気や患者さんからの要望を参考に決める方法があります。
物件別の開業費用
自宅開業は、開業費用が抑えられますが、他の開業方法と比較してどのくらい抑えられるのかをまとめます。
自宅開業以外では、アパート・マンション、テナントを借りる場合を比較します。店舗を持つことではありませんが、レンタルサロンという方法もありますので、参考にされてください。
自宅開業
接骨院を自宅で開業する場合、約10万円〜の予算で開業できます。テナントを取得する費用や家賃がかからないため、低い予算で開業が可能です。なお、内装の工事費や機器の導入により予算が増えることが予想されます。
アパート、マンションで開業
アパートやマンションで開業する場合、施術をするための部屋を借りるため、敷金・礼金や家賃が発生します。予算は〜約百万円が相場でしょう。銀行から借入をしなくとも、貯金でまかなえる場合もあります。アパートやマンションで開業すると、接骨院だけの住所を取得することが可能です。
テナントを借りて開業
テナントを借りて開業すると数百万円〜1千万円が相場です。この相場には、テナントの取得費、家賃や従業員の採用にかかる費用も含まれていますが、自宅開業やアパート・マンションの場合と比べて一般的に高額になります。テナントを借りる場合、自治体からの助成金や補助金、銀行からの融資を開業資金にすることも視野に入れましょう。
開業の際に使える助成金・補助金について徹底解説!詳しくはこちら↓
レンタルサロンで開業
接骨院を開業するにあたって、レンタルサロンという選択肢もあります。施術ベッドがつき、1時間あたり500円台〜2,000円台で場所を借りて施術ができます。自分の店舗ではありませんが、駅前など立地の良いところでお試しで開業することが可能です。リピーターを増やしてから店舗を構えて開業、という方法も取れるため開業の一つの選択肢となるでしょう。
開業資金の調達方法
開業資金の調達方法は、銀行からの融資と国や地方自治体の補助金・助成金があります。銀行から融資を受ける場合は、事業計画書を作成し、融資が受けられるか、金融機関の担当者が客観的に判断する必要があります。国や地方自治体の補助金・助成金は申請期限が決まっているものもあるため、該当する補助金・助成金はポータルサイトでチェックすることが大切です。自宅開業の場合は低予算で開業できますが、施術機器の導入などで必要になった場合は利用を検討してみましょう。
事業計画書の書き方を記入例とともに解説!詳しくはこちら↓
自宅開業をするデメリット4選
自宅開業にはメリットだけではなく、デメリットもあります。自宅開業をする前に知っておきたいデメリットは、以下の4つです。
- テナントよりも集客が難しい
- プライバシーを守りにくい
- 物件の価値が下がる可能性がある
- セキュリティを強化する必要がある
それぞれ順に解説します。
テナントよりも集客が難しい
自宅開業をするデメリットは集客のしにくさが挙げられます。テナントを借りて開業する場合に比べ、立地が住宅地であることが多く、外観も一般住宅のため患者さんに認知してもらいにくいです。このため、来院のハードルが上がります。集客対策として、看板の設置やSNSによる集客が挙げられます。
高評価の口コミや来院ハードルが下がれば施術内容で勝負できるため、十分な対策が求められます。
Instagramでの効果的な集客方法について解説!詳しくはこちら↓
プライバシーを守りにくい
自宅に施術スペースがあると、プライバシーを守りにくいのがデメリットです。ホームページに治療院の情報を載せるので、自宅の住所・電話番号が不特定多数の人の目にふれます。
また、施術を通じて患者さんと顔を合わせる機会が増えるため、近所の方や生活圏が一緒の方はテナント開業に比べて会う機会が増えることが予想されます。
このため、上記のようなデメリットも加味した上で開業すると良いです。
物件の価値が下がる可能性がある
自宅開業をすると施術室と待合室に改装するため、居住用物件としての価値は変動します。トータルで見ると改装に使った費用を取り戻すのは難しいでしょう。さらに立地が悪いと、次の買い手が見つからず、物件の売却に苦戦する可能性もあります。
セキュリティを強化する必要がある
自宅開業ではセキュリティ強化は避けて通れません。看板や標識を出して営業すると、空き巣などにも治療院の場所を知らせることになるからです。施術スペースと居住スペースが同じため、個人情報の管理や売上金の管理を適切に行う必要があります。
このため、セキュリティ会社を入れるなどの対策が求められます。最近は防犯カメラも高画質で低価格です。このようなセキュリティ対策も導入検討しましょう。
条件が合えば自宅開業は有力な選択肢になる
治療院(接骨院)は自宅開業ができますが、メリット・デメリットがあります。しっかりと理想としている開業をイメージして成功させましょう。
また、開業後は集客をすることが大変な場合が多いです。あらかじめ対策を3つ以上持っておくことを意識してください。
この記事では、アパートやマンション・テナントやレンタルサロンでの開業費用も解説しました。条件があえば自宅開業は有力な選択肢になるので、この記事を何度も見直してみてください。きっと納得のいく自宅開業が実現することでしょう。
監修者プロフィール
- 大学卒業後、東京医療専門学校に進学。鍼灸マッサージ師、柔道整復師の国家資格を取得。整骨院や整形外科などの医療機関にて臨床現場を経験し、その後カナダ・トロントへ留学。現地治療院にて臨床を経験し、帰国後、麻布十番に治療院を開業。
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