鍼灸院を開業するにあたって具体的にいくらかかるかわからず、お困りではないでしょうか。この記事では、開業資金の内訳や開業に必要な準備を解説します。
記事を最後まで読むと、開業資金の調達方法や鍼灸院経営で失敗しないコツがわかるので、ぜひご覧ください。
目次
鍼灸院開業に必要な開業資金
鍼灸院開業に必要な開業資金は、まとめると以下の表の通りです。
項目 | 費用 |
物件取得費 | 50万〜400万円 |
施術機器代 | 100万〜300万円 |
ツール・システム導入費 | 〜数十万円 |
人件費 | 20〜100万円 |
広告宣伝費 | 30〜100万円 |
必要経費は一覧表にして可視化すると無駄を省けます。費用をかけた後に無駄だった事に気がつき後悔しないよう、注意してください。
物件取得費
物件取得費用とは、鍼灸院の物件を取得するための費用です。物件取得費用には以下のものがあります。
- 主に土地に関係する費用:土地・建物取得費・駐車場・駐輪場契約
- 主に建物に関する費用:内装・外装工事費用・前家賃・契約金・保証金・敷金・礼 金・管理費・共益費・仲介手数料
鍼灸院は、設備構造基準を満たさないと開業できません。設備構造基準を満たすために、改装すると改装費用が高くつく可能性があります。
物件取得費用を抑えるために以前鍼灸院・接骨院だった建物(同業種の居抜き物件)を探すと良いです。不安がある場合は、保健所に問い合わせしたり事前に相談しておくことでリスクを下げることができます。
鍼灸院の物件契約について詳しくはこちら↓
施術機器代
施術機器代について、その価格帯によって金額が異なります。
具体的な例として、低周波治療器、高周波治療器、微弱電流治療器、超音波治療器、赤外線治療器、温熱(ホットパック)治療器、マイクロ波治療器などがあります。
それぞれに特徴と目的がありますので、必要なものが何かを確認し、コストもチェックする必要があります。
また、デモ機器やトライアル使用も可能な場合がありますので、各医療機器メーカーに問い合わせることもおすすめです。機器の導入方法も多様化しており、レンタルやリース、一括購入、中古品などさまざまな選択肢があります。それぞれにメリットがあるので、必要な機器と導入方法について検討すると良いです。
- 院内設備:施術台、カーテン、鍼、お灸、消毒用器材、感染性廃棄物専用ゴミ箱、棚、コピー用紙、各種ファイル、トイレットペーパーなど
- 患者用設備:シーツ、タオル、椅子、机、スリッパなど
開業時はレンタルなどを利用してコストを抑え、経営が軌道に乗ってきたら設備の購入を検討する方法もあります。
ツール・システム導入費
鍼灸院においてツールやシステム導入は業務効率化の面から必要です。具体的に必要なツールやシステムは以下の通りです。
- 電子カルテ
- 顧客管理システム
- レジスターやパソコン
- 予約表など
導入が有効な理由は以下の通りです。
- 効率化と正確性:電子カルテや顧客管理システムを利用することで、情報の管理やアクセスが効率的になります。レジやパソコンを使用することで、データ入力や処理がスムーズに行われ、間違いやミスが少なくなります。
- 情報の一元化と共有:電子カルテや顧客管理システムは情報を一元化し、医療従事者やスタッフ間で共有することができます。これにより、患者の治療履歴や健康情報に簡単にアクセスできるので院内連携が円滑になります。
- 予約管理の効率化:予約表や予約管理システムを導入することで、予約の確認や変更が容易になります。これにより、予約の重複や混乱を防ぎ、スムーズな案内と施術を実現することができます。
- データのセキュリティ: 電子カルテや顧客管理システムはデータのセキュリティを確保するための機能を備えています。患者の個人情報や医療記録などのデータが適切に保護され、不正アクセスや情報漏洩のリスクが低減されます。
これらのシステムやツールの導入は、院の運営効率やサービス品質の向上につながります。
初期費用を抑えるためにサブスクリプションサービスもあります。補助金や助成金の使用も視野に入れ、賢く揃えることが大切です。
人件費
人件費は、鍼灸院を大規模に展開する際や従業員を雇う際に不可欠な費用です。これには様々な要素が含まれ、主な内訳は以下の通りです。
- スタッフの給料
まず、スタッフの給料です。従業員には働きに見合った適正な報酬が支払われることが求められます。これには経験や技能、役職などに応じて金額も変動します。
- 社会保険料
社会保険料も人件費の一部を占めます。雇用する従業員に対して、健康保険や厚生年金などの社会保険を適切に支払う必要があります。
- 各種手当
各種手当や福利厚生などの支出も考慮が必要です。これには交通費補助、家族手当、退職金などが含まれ、従業員のモチベーションを維持し、働きやすい環境を整えるために重要です。
経営者の立場から見ると、人件費は固定費であり、簡単に削減できないため、慎重な管理が必要です。従業員の雇用や給与体系の適切な設計、労働条件の向上などが経営戦略の一環として重要になります。
広告宣伝費
広告宣伝費は、鍼灸院の開業を周知させるために必要な費用です。例えば以下の様な内訳が想定されます。
- 看板制作費
- Webサイト制作費用
- ポータルサイト登録費用
- Web広告出稿費用
- チラシ・折り込み広告制作・配布費用
その他に診察券や回数券・クーポン券の発行費用があります。患者層により、web媒体が効果的か紙媒体が効果的か分かれます。費用対効果を見ながら販促方法を検討すると良いです。
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開業に必要な準備
開業に必要な準備は、はり師きゅう師の国家資格と施術管理者の届出です。届出ができる要件は、施術管理者研修の受講と1年間の実務経験です。
この章では、オーナーが施術する時の条件と鍼灸師を雇う場合を解説します。鍼灸師を雇えばオーナーに資格がなくても開設できます。
オーナーが施術する場合
鍼灸院を開設し、10日以内に管轄の保健所へ開業届を提出します。その後の手続きは店舗を構える場合と、店舗を構えない場合で異なります。
- 店舗を構える:施術所の開設届
- 店舗を構えない:出張施術業務開始届
条件により届出が異なるため、必要な手続きを確認しましょう。なお、どちらの場合でも開業届の提出は必須です。
鍼灸師を雇う場合
オーナーに鍼灸師の資格がない場合、はり師・きゅう師免許を持つ方を施術者として登録すれば、開業できます。
開業資金の調達方法
開業資金の調達方法は以下の3つがあります。
- 日本政策金融公庫
- 各自治体の融資
- 補助金や助成金
融資を受けるためには審査が必要です。スケジュールが異なるため、確認しながら進めてください。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国の出資により運営される金融機関です。銀行に比較して、融資を受けやすく、連帯保証人がいらない特徴があります。
また、金利が低く返済期間が長いメリットがありますが、手続きが複雑で審査に時間がかかります。このためすぐにお金が必要な時は不向きです。
各自治体の融資
鍼灸院の開業資金を調達するために、自治体の融資を活用する方法があります。
一般的に開業や起業を後押ししており、低金利で資金調達が可能です。融資の開始まで時間がかかる場合があり、各自治体の窓口で確認する必要があります。
補助金・助成金
補助金は事業拡大や設備投資に支給される返済不要の支援金です。管轄は経済産業省や地方自治体です。
助成金とは、雇用促進や職場改善に支給される返済不要の支援金です。管轄は厚生労働省です。それぞれ募集期間や対象が異なるため、詳しくは以下で検索するとわかりやすいです。
参照:補助金ポータル
鍼灸院で使える助成金・補助金について詳しくはこちら↓
開業費用を抑えるには
開業費用を抑えるには以下の方法があります。
- 事業計画書を作成する
- 出張専門の鍼灸院になる
- レンタルサロンから開業する
出張専門の鍼灸院とレンタルサロンは、出張業務開始届で仕事を始められるため、施設にかかる費用を大きく削減できます。
事業計画書を作成する
開業費用を抑えるために、事業計画書の作成は有効です。事業計画書の作成は費用を可視化し、無駄を省くことに繋がるからです。
事業計画書には取扱商品・サービスの内容という項目があり、フォーマットに沿って埋めていくと、競合や市場分析を書く場所があります。アイディアを思い浮かべるだけではなく、一歩踏みこむことで出費を可視化し、この段階で無駄と分かれば費用を抑制できます。
事業計画書の書き方を記入例とともに解説!詳しくはこちら↓
出張専門の鍼灸院になる
出張専門の鍼灸院とは店舗を持たず、鍼灸師が患者宅に行き施術を行うスタイルの鍼灸院です。
店舗を持たないと、施設にかかる費用がかからないため、資金を抑えて開業が可能です。
この場合の届出は、出張業務開始届で、自宅住所管轄の保健所に提出します。
レンタルサロンから始める
鍼灸院を開業する方法の一つにレンタルサロンがあります。レンタルサロンとは、施術スペースを1時間単位で借りられるサービスです。
レンタルサロンを利用した開業は、出張専門の鍼灸院と同じです。出張業務開始届を所轄の保健所に提出して業務を開始します。場所代はレンタルサロンの契約代金のみになるため、初期費用を抑えて開業が可能です。
鍼灸院の開業手順
鍼灸院開業までの流れは以下の通りです。
- 開業エリア選定
- 施設管理者の届出:地方厚生局
- 資金調達:事業計画書の作成
- テナント選定:設備構造基準はクリアしているか
- 鍼灸院の名称設定:ルールに沿った名称
- テナント改装:動線を意識する
- 開業届提出:開業日から10日以内
- 広告準備
- 開業許可取得:保健所職員による監査
- 開業
流れと留意点をまとめました。流れを確認すると、資金調達は3番目と比較的早いです。テナント選定とテナントの改装・広告準備にお金がかかるため、見通してから調達します。
鍼灸院経営で失敗しないためのポイント
せっかく資金調達して鍼灸院を経営するなら失敗したくないですよね。鍼灸院経営で失敗しないポイントは以下の通りです。
- 新規顧客の獲得
- リピーターの獲得
- 自費メニューの充実
ライバル鍼灸院との差別化をするように考えるとうまくいきやすくなるので、それぞれのポイントを解説します。
新規顧客を獲得する
新規顧客の獲得は、鍼灸院の売り上げを増やすために非常に重要です。新しい顧客を引き付けるためには、独自の強みやサービスをアピールして来院を促すことが必要です。
独自のサービスを開発する際には、ターゲット設定が有効です。
たとえば、オフィス街のサラリーマンをターゲットにする場合は、肩や首、腰などの施術をカジュアルに提供することで、ストレスを軽減するイメージ作りが大切と考えることができます。
または、OLをターゲットにする場合は、お灸を使用してリラックスして冷え性対策ができるメニューを導入することが考えられます。
さらに、獲得した新規顧客からの口コミは、新たな顧客を引き付ける上で非常に有効です。顧客が良い体験を共有し、その情報が広まれば、新しい顧客を連れてくる可能性が高まります。そのため、新規顧客が他の人々に積極的に紹介してくれるようなサービスを提供することが重要です。
リピーター獲得に力を入れる
鍼灸院を成功させるためには、リピーターの獲得が極めて重要です。一定の患者が定期的に来院することは、売上の安定につながるからです。
リピーターを獲得するには、施術内容の充実はもちろんのこと、施術スタッフと患者の信頼関係を築くことも重要です。両者の信頼関係があれば、患者は院に対して安心感を持ち、継続的な来院を望む可能性が高くなります。
リピーターを増やすことで、売り上げの予想が立てやすく、鍼灸院の経営がより安定したものになります。そのため、リピーターの獲得に積極的に取り組むことが失敗を防ぐ大きなポイントとなります。
自費メニューを充実させる
鍼灸院の売り上げを伸ばすためには、自費メニューの充実が不可欠です。保険治療は医師の同意が必要であり、対象疾患も限られているため、自費メニューは重要な収益源となります。
例えば、美容鍼やリラクゼーション目的のお灸などが挙げられます。また、はり師やきゅう師の資格以外にカイロプラクティックや整体のスキルを身につけ、多彩な自費メニューを提供することも可能です。
自費メニューは価格を自由に設定できるため、利益を上げやすい施術と言えます。さまざまなニーズに応える自費メニューを提供することで、鍼灸院の収益向上につながります。独自性を打ち出し、強みとなるメニューを充実させることが重要です。
鍼灸院の自費メニューについて詳しくはこちら↓
開業資金を調達して鍼灸院を開業しよう
鍼灸院を開業するには、適切な開業資金を調達することが必要です。予算を立てることで、どれだけの融資が必要か明確になり、効果的な資金調達が可能になります。
しかし、開業しても顧客が集まらなければ事業は成り立ちません。顧客獲得のためには、新規顧客の獲得とリピーターの獲得が不可欠です。魅力的なサービスや効果的なマーケティング戦略を通じて、顧客の信頼を得ることが重要です。
適切な開業資金を調達し、経営計画を立てて、鍼灸院を成功に導きましょう。
鍼灸院に必要なマーケティングについて詳しくはこちら↓
監修者プロフィール
- 大学卒業後、東京医療専門学校に進学。鍼灸マッサージ師、柔道整復師の国家資格を取得。整骨院や整形外科などの医療機関にて臨床現場を経験し、その後カナダ・トロントへ留学。現地治療院にて臨床を経験し、帰国後、麻布十番に治療院を開業。
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