【本記事の監修者】
岩井 隆浩(麻布十番ループル治療院 創業者)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師
齋木 拓 (麻布十番ループル治療院)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
「これから治療院を開業したいけど、何から始めていいのかわからない」
このように考えて、開業に踏み出せない方はいませんか。この記事では、今後治療院の開業を考えている方に向けて、治療院開業までの事前準備や知っておきたい補助金について解説します。
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治療院を開業するための事前準備
治療院を開業しようと考えて実際に開業するまで、平均で1年以上かかります。
また事前準備を怠ると、開業までに時間がかかったり、申請が通らなかったりと後戻りできない状況で問題が発生する場合があります。ここでは、特に重要な事前準備についてご紹介していきます。
開業する治療院の種類を決める
まずは治療院の種類を検討しましょう。治療院で行われる施術は一般的に、主に医療類似行為に分類される体の不調の治療を目的とした施術になります。
自分が行いたい施術に合わせて、どんな治療院を開くか決めましょう。
必要な資格を取得する
治療院は開業する治療院ごとに下記のような資格が必要です。
それぞれ資格の取得までの時間や難易度が違うので、確認していきましょう。
整骨院・接骨院
整骨院や接骨院を開業するには、国家資格の柔道整復師が必要です。
柔道整復師の資格を取得するためには、高校卒業以上で柔道整復師養成施設として認定されている
専門学校(3年制以上)、短大(3年)、大学(4年制)で所定の科目を履修する必要があります。
その後柔道整復師国家試験を受験し、合格後に登録が完了すれば柔道整復師になれます。柔道整復師国家試験は実技と筆記試験ですが、実技は在学中に実施します。
その後は筆記試験による国家試験のみとなります。
2021年3月に行われた柔道整復師国家試験の合格率は66.0%なので、他の必要な資格と比較すると難しい試験です。
(参照:公益財団法人日本柔道整復師会ホームページ)
国家資格の難易度は実施される年度によって異なります。近年の試験問題は以前の試験とは異なる部分が出てきているなど、合格率も低くなってきている傾向があります。
毎年の同行も確認するようにしましょう。
管理柔道整復師になるために必要な資格はについて詳しくはこちら↓
⇒整骨院開業のために必要な資格について詳しくはこちら↓
鍼灸院
鍼灸師になるためには、「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格が必要です。どちらかの資格だけでも開業は可能ですが、鍼灸師と名乗ることはできず施術できる範囲も限られるため両方の資格取得をおすすめします。
基本的に学校の授業と試験実施も同一に行われるものです。鍼灸師の国家資格を取得するためには、高校を卒業後に厚生労働省や文部科学省の指定を受けた養成施設で3年以上の学習が必要です。
養成施設卒業後に鍼灸師国家試験に合格すれば、鍼灸師の国家資格を取得できます。
2022年2月に行われた鍼灸師国家試験の合格率は、はり師が74.2%できゅう師が76.1%です。
(参照:厚生労働省ホームページ)
※鍼灸院開業の流れや手続き、開業資金や助成金、店舗の間取りまで大解説!
指圧・あん摩・マッサージ
指圧やあん摩、及びマッサージを行うには、あん摩マッサージ指圧師という国家資格の取得が必須となります。整体師やカイロプラクティックなどと似た職業になりますが、それぞれ施術できる範囲や内容が異なります。
また保険の適用も可能となります。その場合は、医師の同意書が必要となります。
あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得するには、高校卒業後に文部科学大臣または厚生労働大臣の指定する学校や養成施設で3年以上学習が必要です。養成施設卒業後に東洋療法研修試験財団が行うあん摩マッサージ指圧師国家試験に合格して登録が完了すれば、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得できます。
2022年2月に行われたあん摩マッサージ指圧師の合格率は84.7%です。
(参照:厚生労働省ホームページ)
整体・カイロプラクティック
整体やカイロプラクティックを開業するために、資格は必要ありません。未経験でも開業は可能ですが、整体のお店に通いながら民間資格をとるのが一般的です。
ただし民間資格は種類が豊富なので、自分がどのような整体師になりたいのか、どんな技術を学びたいかによって選択する必要があります。一般的に民間資格は、3〜6ヶ月で取得可能です。
通学するスクールもありますが、時間や近くにスクールがない場合は通信教育でも資格の取得が可能です。内容はもちろんですが、授業時間、試験、学費、期間などの要素もさまざまなのでよく調べてから進めましょう。
整体師に必要な資格について詳しくはこちら↓
治療院の開業日を決める
開業に必要な資格を取得すれば開業は可能です。準備をして治療院の開業日を決定しましょう。一般的に開業までにかかる期間は、5〜6ヶ月と言われています。
しかし、事前準備や勤めている院の状況、開業したい物件の空き状況によって異なります。
最低でも1年以上前には、治療院を開業する準備を始めることをおすすめします。入念に準備した開業は必ず成功率を高めます。
人生においても大きな出来事になることがほとんどなので抜かりない開業準備をしましょう。
開業する場所を決める
開業する場所を選ぶ上で重要なポイントは、コンセプトに合わせた場所を選ぶことです。
例えば住宅地で開業する場合、高齢者や主婦層の利用が多くなります。
また、オフィス街や駅前だと会社員の利用が多くなります。自分がターゲットにしている客層に合わせた場所での開業が重要となります。
しかし、良い条件の場所が必ずしも成功しやすいとも限りません。競合が多かったり家賃が高かったりする場合がほとんどです。独自のコンセプトを綿密に考えておきましょう。
友達や同業者、またはターゲットになるペルソナに近い人に検討しているコンセプトを話すのも良いでしょう。同じエリアやコンセプトが近い競合と、どのように差別化するのか?
開業をするにあたり、欠かせない過程になりますので、焦らず丁寧に設定するようにしましょう。
独自性があることで院にファンがつくので、地域に愛される治療院となるでしょう。
補足:自宅での開業も可能
開業するにあたって、自宅で治療院を開業することも可能です。
しかしメリットとデメリットの両面が存在します。メリットは、初期費用が抑えられることです。自宅の空いているスペースがあれば、そこに院を作ることで家賃を節約できるかもしれません。
また通勤時間もないので、効率的な仕事とプライベートの両立が可能です。
一方でマンションの一室で治療院を開業する場合は、認知までに時間がかかるというデメリットもあります。
また保健所の申請がしっかり通るか図面の確認は必要です。治療院向けの物件を借りていれば、看板を立てたりのぼりをつけたりできますが、マンションの一室では難しいことが多いです。認知度を上げるためには、SNSや口コミを利用するのがをおすすめです。
内装を決め設備を揃える法的な要件の確認
治療院の内装は、保健所が定める構造設備基準によって決められています。
解説に必要な要件はこちらです。
・6.6 ㎡以上の専用の施術室を有すること
・3.3 ㎡以上の待合室を有すること
・施術室面積の 7 分の 1 以上の窓開口面積があること(又はこれに代わるべき適当な換気装置があること)
・施術用の器具、手指の消毒設備を有すること
・常に清潔に保つこと
・採光、照明及び換気を十分に行うこと
また指導基準とその他の項目として、施術所は他の施設と機能的かつ物理的に区画されていること 、施術室や待合室及び廊下が明確に区画されていること、消火設備及び消火器等が用意されていること、使用済のはり等が適切に廃棄できるようされていること。
このような項目が存在しています。開設届は、開設後10日以内に提出することが原則となります。
書類は全て2部ずつ揃えておくと良いでしょう。
構造設備基準は開業する都道府県や保健所によって異なるため、事前に開業する場所の保健所へ問い合わせることをおすすめします。
内装を安く抑えたい方におすすめなのが、治療院の居抜き物件を活用する方法です。以前治療院があった場所は、構造設備基準を満たしている可能性が高く内装がそのままの場合、初期費用を安く抑えることが可能です。
内装が決まったら、機材を購入します。機材は、施術用のベッドやまくら、メディカルウェアやタオルなどの消耗品など多岐に渡ります。
機材によって価格に差があるので、ホームページや開業している知人などに確認して購入することで初期費用を安く抑えることが可能です。
治療院の内装デザインの基準と注意点について詳しくはこちら↓
オープンの事前告知をする
いよいよ準備が完了したら、オープンの事前告知を行いましょう。事前告知で活用できるものは、以下のようなものがあります。
- ホームページ
- SNS
- チラシの配布
- 地域の情報誌に掲載
SNSでの発信やチラシの配布は比較的安くできますが、地域の情報誌に掲載する場合は高額になる可能性もあります。予算をしっかり決めて、スモールスタートすることが重要です。
事前告知する上での注意点は、広告の規制を十分理解することです。
特に国家資格の必要な整骨院や鍼灸院は、広告の規制に関する法律を遵守する必要があるので必ず確認してから作成しましょう。
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マーケティング戦略の策定
開業するまでにはたくさんの準備がありますが、開業後の集患や宣伝には適切なマーケティング戦略を事前に策定しておくことが非常に重要です。
ウェブサイト、広告、ソーシャルメディアなど、効果的なプロモーション手法を検討しましょう。
院のステージに合わせて計画的に実施できる取り組みを考えましょう。
また、予算の使用方法や範囲についても熟考が必要です。
自院で対応できることと外部に依頼することを区別して考えると、スムーズに進めることができます。
さらに、最近では広告制限のルールが厳しくなっていますので、法令に適合した取り組みを正確に行うようにしましょう。
治療院を開業するまでの注意点
治療院を開業するにあたって必要な事前準備をご紹介しました。それでは、そのほかに注意すべき点はないのでしょうか。ここからは、開業するまでの注意点をご紹介します。
ビジネスプランや事業計画書の作成について
治療院を開業する前には、ビジネスプランを作成することが非常に重要です。開業を実現するためには、多くの人々に開業の経緯や目的、計画などを説明する場面が増えるものです。
また、開業はスタート地点であり、ゴールではありません。開業後の経営や運営方法を明確にするために、具体的な数字を使って明確化する作業を必ず行いましょう。
さらに、開業資金を調達する際にも、このビジネスプランを利用して説明することになります。優れた計画を作成することで、素晴らしいアイデアが浮かびやすくなったり、周囲の人々が自然と応援してくれるようになるため、結果的に開業の成功率が確実に上がります。
また、詳細な計画を立てることでリスクが見えるようになり、失敗の可能性も低くすることができるのです。
さらに、成功したパターン、通常の予想パターン、うまくいかなかった場合のパターンなど、異なるシナリオに基づく数字の予測も立てておくと、リスクを回避しやすくなるでしょう。予想される収入や支出についても十分に検討するようにしましょう。
開業後の経営では、リスクを最小限に抑えながら成功要素を最大化することが最も重要です。
特に初めての開業では、予期しないことがたくさん起こることもあります。失敗を未然に防ぐためにも、面倒くさがらずにしっかりと計画を立てることが重要です。何度も修正しながら計画を完成させましょう。
一度で完璧な計画書を作成することはできません。目標やターゲット、市場の状況、費用、収益予測など、見るべき数字を整理しながら、事業の方向性や経営計画を明確にしましょう。
開業資金の概算を把握
開業するにあたって、一番不安になるのは資金面です。実際に開業しても、すぐに黒字にするのは難しいでしょう。一般的に治療院を開業する資金は1,000万円前後と言われています。
また開業にかかる費用とは別に、開業後の運転資金やランニングコストもかかってきます。自己資金が少ない場合、国や各都道府県の補助金が活用できる場合があります。
後ほどご紹介しますので、そちらを参考にしてください。
開業資金の相場や融資を安く抑えるポイントについて詳しくはこちら↓
市区町村に届ける書類の確認
治療院を開業するにあたっては、市区町村へ届出が必要な書類があります。
<必要書類の一例>
(参照:大阪市ホームページ)
基本的に、開業後10日以内に届出が必要です。届出をしない場合は開業の取り消しなどになる可能性もあるので、必ず各市区町村に確認を行って届出を済ませましょう。
保険とリスクの管理
開業後の施術において、過誤や事故が起こる可能性はゼロではありません。
そのため、適切な保険によるカバーがされているかを検討することも非常に重要です。
施術者保険は、つい後回しにされがちですが、スタート時からリスク管理を徹底して行うことは安心感をもたらします。施術内容や規模に合わせた保険プランを選択するようにしましょう。
保険に関しては、各種協会や保険会社、または専門学校に問い合わせることで、さまざまな保険の案内を受けることができます。患者に対する施術によるリスクを評価し、適切な保険プランを選択しましょう。
持続的な学習と専門知識の更新
治療院の分野は絶えず進化しています。開業前に獲得した知識や技術は重要ですが、それだけではいつまでも通用するわけではありません。
また、新しい論文や健康知識の発展も近年は速いサイクルで行われています。
さらに、患者の健康に対する関心も高まり、知識水準も驚くほど向上しています。そのため、開業後も持続的な学習と専門知識の更新が求められます。
開業後は忙しくなりがちで、周囲とのコミュニケーションが薄れがちになるかもしれませんが、情報をキャッチするためにアンテナを張り、セミナーや研修に参加し、最新の情報にアクセスする努力を怠らないようにしましょう。
自身のスキルを向上させることで、優れた治療を提供し、患者の満足度を高めることができます。
治療院で使える補助金の種類
前述しましたが、治療院を開業する場合最低でも1,000万円前後の資金が必要になります。
しかしまとまった資金がない方は、補助金の活用も視野に入れてみましょう。
ここからは、開業時に自己資金が少ない方におすすめの補助金をご紹介します。
小規模事業者持続化補助金
商工会や商工会議所の支援を受けて経営計画を作成し、販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。広報費や機械装置等費などが対象で、治療院の場合は新しい機材の購入や内装工事などに活用できます。
内容によっては対象にならないものもあるので、小規模事業者持続化補助金のホームページや補助金専門の税理士に相談してください。
IT導入補助金
中小企業や小規模事業者が、ITツール導入に活用できる補助金です。
治療院の場合、電子カルテの導入や予約管理システム、会計システムなどに活用できます。
補助対象費用は450万円が上限で、かかった費用の2分の1を補助してくれます。
詳しくは、IT導入補助金のホームページをご確認ください。
ものづくり補助金
中小企業や小規模事業者が、今後複数年にわたって直面する制度(働き方改革や賃上げ、インボイスなど)に対応するための設備投資を支援する補助金です。要件を満たす中小企業や小規模事業者などが対象で、1000万円が上限です。
中小企業の場合は補助対象費用の2分の1、小規模事業者や個人事業主の場合は補助対象費用の3分の2を補助してくれます。治療院の場合は他の治療院がまだ行っていない、革新的な新規サービスや仕組みが補助対象の判断基準になります。
詳しくは、ものづくり補助事業のホームページをご確認ください。
自治体が行っている補助金
国が行っている補助金以外にも、各都道府県や市区町村が独自に行っている補助金があります。地域の産業振興が目的で、内容も多岐にわたっています。
開業前に各自治体のホームページなどを確認し、活用できる補助金がないか確認しましょう。
治療院を開業するために事前準備は重要
スタッフの採用とトレーニング
開業の規模やモデルによっては人材の採用が不可欠となります。
また採用してからすぐに即戦力で稼働できない場合が多いのも事実です。必要に応じたスタッフ採用も事前に準備をしておきましょう。
適切な資格や経験を持つ人材を見つけ、必要なトレーニングを提供してチームを育成することで成功率を高めることが可能です。
その際にも、どんな人材を求めているのか?保持資格は何が必要か?可能な限り明確にしておくと良いでしょう。
まとめ
治療院を開業するためには、さまざまな事前準備や申請書類が必要です。また費用もかなりかかってしまいます。
しかし自治体の補助金などが充実しているため、自己資金が少なくても始めやすい環境になっています。治療院を開業する際、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
監修者プロフィール
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