【本記事の監修者】
岩井 隆浩(麻布十番ループル治療院 創業者)
はり師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師/柔道整復師
接骨院・整骨院で働いている人の中には、将来独立して自分の店舗を持ちたいと考える方も多くいます。
しかし独立を考える中で「本当に儲かるのか?」と疑問に思う方も、せっかく独立するのであれば、会社員の時より稼ぎたいものです。
また独立したものの、集客、店舗経営に悩む方も多くいるかと思います。
本記事では、接骨院や整骨院の経営を成功させるポイントをご紹介します。
開業を考えている方、また現在運営している店舗がある方はご紹介するポイントを確認しながら読んでください。
★高収入を目指す4つのコツをすぐに読みたい方はこちら
目次
接骨院・整骨院の経営は儲かるのか?
接骨院や整骨院の経営で、儲かる可能性は十分にあります。
接骨院・整骨院で働く柔道整復師の平均年収は約297万円ですが、経営者の中には年収1,000〜3,000万円程度稼ぐ経営者も存在します。
しかし、経営は簡単ではありません。
事業計画や事前準備をしっかり行い、正しい経営をしないと経営し続けることは難しいです。
接骨院・整骨院を取り巻く環境とは
ここでは、接骨院・整骨院を取り巻く現状をお伝えします。
独立や開業を考える前に、現状の把握をすることで開業時のリスクを抑えることができます。
→事業計画書の書き方について詳しくはこちら
競合が増加している
日本の人口は年々減少しているのに対し、接骨院・整骨院は増加傾向にあります。
厚生労働省が公表したデータによると、平成10年に23,114箇所だった施術所が、平成26年には45,572箇所と約2倍に増えています。
日本の人口は減り続ける一方で、施術所数は増え続けているので、相対的にも競合は増加しており、開業して競合に勝ち続けることは簡単では無いことが分かります。
(参照:厚生労働省ホームページ)
保険診療には限界がある
接骨院・整骨院のすべての施術に保険施術を適用できるわけではありません。
保険診療を適用できる要件を満たした施術のみに限定してしまうと、保険施術で扱える症状が少なくなるだけでなく、他の整形外科や病院に患者さんが流れてしまう可能性もあります。
また、保険適用外の施術を保険適用と偽り、架空請求をする接骨院・整骨院が増えていることから、国の保険請求の審査は今後さらに厳しくなることが予想されます。
→保険診療についてや不正請求の注意点について詳しくはこちら
倒産件数が増加している
接骨院・整骨院が増加する一方で、倒産件数も増加しています。
新日本法規出版株式会社によると、整骨院・療術・マッサージ業者の倒産件数は2016年以降増加傾向にあり、2018年には、85件と2000年以降で最多を記録したとのことです。
また、倒産した事業者の中でも、小規模業者の倒産が多く、個人で事業を始めた人の継続が難しいことが考えられます。
(参照:新日本法規出版株式会社)
接骨院・整骨院の経営で高収入を目指す4つのコツ
この記事を読んでいる方の中には、今後独立する予定の方だけでなく、現在経営に苦戦していて、不足しているポイントを知りたい方もいるかと思います。
ここでは、接骨院・整骨院を経営する上で成功に欠かせない4つのポイントをご紹介します。
将来開業を考えている方だけでなく、現在の経営状況に悩んでいる方も次にご紹介するポイントを今一度確認してください。
①保険診療以外のメニューを充実させる
接骨院・整骨院で大きな収入を得たい場合、保険施術以外のメニューを充実させる方法があります。
保険施術以外のメニューは、接骨院・整骨院ごとに料金が設定できるため、顧客満足度が高いメニューを最適価格で取り入れることで収益の増加が見込めます。
保険施術以外のメニュー例として以下のものがあります。
- 保険適用外のストレッチ・マッサージ
- 鍼・灸
- 運動療法
独自の施術やメニューを考えることで、他の接骨院・整骨院との差別化を図ることが重要です。
また最新の物療機器設備や、新しい技術や注目のニーズに応えられるように新しいものを導入することも必要です。
全国的に院数が増えていく中で、特徴は必要です。
そして、変化していかなければ例え今が忙しくても、いつ周りに競合ができるかわかりません。
常に情報のアンテナを貼ることも重要です。
最新の情報に触れられるように工夫しておくとよいです。
→自費メニューの導入事例やポイントについて詳しくはこちら
②新規の患者さんを増やす
接骨院・整骨院として成功して収益を増やすには、新規の患者さんを獲得することが不可欠です。
新規の患者さんを増やすのは、簡単ではありません。今まで接骨院・整骨院を知らなかった方、別の場所に通院していた方の集客には、以下のポイントを意識してください。
立地に合わせた集客や宣伝をする
あなたの接骨院・整骨院はオフィス街に開業予定ですか。それとも住宅街に開業予定ですか。
開業する立地やターゲット層に合わせ取り組みを行いましょう。
例えば、オフィス街であれば開院時間の工夫をして仕事に合わせて通院できることをアピールする、住宅地であれば地域密着であることをアピールしたり、地元のコミニティで知ってもらう工夫をすることが大切です。
また、自分の開業地が、お客さんにとってどのようなエリアであるかを熟考し、適切な方法で集客・宣伝を行うことも重要です。
さらに最近はSNSでの集客も多くの接骨院・整骨院が取り入れています。Webサイトやブログ開設もありますが、まずは手軽に始められるチラシやTwitter、Instagramでの集客がおすすめです。
→オシャレで宣伝効果の高いチラシの作成方法について詳しくはこちら
患者さんの悩みをしっかり聞く
接骨院・整骨院の基本ではありますが、患者さんの悩みをしっかり聞くことが大切です。
患者さんは、自分の問題を解決したくて来院しています。
抱えている問題を解決することで、顧客満足度はグッと高まり、リピートにつながります。
患者さんの満足度を上げると、口コミ評価も高くなり、特定の接骨院・整骨院が無い方は「口コミも良いし一度行って見ようかな」と新規顧客獲得につながります。
患者さんに対する丁寧なカウンセリングも意識的に行うと良いです。
痛みだけでなく、家庭や職場で大きな悩みを抱えていることにより課題解決が困難になっていることも珍しくありません。
丁寧なカウンセリングを心掛けることでより本質的な課題に向き合えるようにすると結果的に信頼関係が構築されるので施術もうまくスムーズにいくことが多いです。
また、継続的なスタッフ教育を推進することも重要です。
施術や問診における知識や技術はもちろん重要ですが、社会的なスキルの向上や施術以外の領域での成長も必要不可欠です。
悩みをしっかり聞きつつ、それにしっかり応えられる準備をすることが顧客満足度の向上につながります。
通いやすい雰囲気を作る
院内の第一印象は大事です。
一言で雰囲気と言っても、気をつけるべきポイントは多岐に渡ります。
例えば院内の清潔感。初めていく接骨院・整骨院の掃除が行き届いていない場合、次回も行きたいと思う患者さんは少ないはずです。
またスタッフの雰囲気も満足度を左右します。
接骨院や整骨院の口コミをみていると「受付のスタッフの対応がよかった/悪かった」のような口コミを目にします。
院長だけでなく、スタッフ全員の接客雰囲気も新規の患者さん獲得に欠かせません。
また経験豊富なスタッフの雇用を推進することも忘れてはいけません。
業界歴の長いスタッフも必要ですが、業界以外の多様な経験が豊富なスタッフもきっと院内運営を手助けしてくれることにつながります。
バランスの良い人材を採用して院内の良い雰囲気作りを進めると良いです。
③既存の患者さんにリピートしてもらう
長く続いている接骨院・整骨院には、必ずリピーターがいます。
一度来院した患者さんに「次もこの接骨院・整骨院に通いたい」と思ってもらうような工夫が必要です。
ここでは、既存の患者さんにリピートしてもらうポイントをご紹介します。
患者さんとの信頼関係を構築する
接骨院・整骨院で成功する(=長く続ける)には、通院している患者さんとの信頼関係の構築が不可欠です。成功している接骨院・整骨院の先生は、必ずと言って良いほど患者さんに信頼され、愛されています。
患者さんに「この先生だから任せられる」「この先生には、悩みを何でも話せる」と思ってもらえるように患者さんの悩みを親身になって聞くことで、信頼、リピートにつながります。
患者さんにファンになってもらえるような施術、サービスを提供するよう意識してください。
来院時に次回予約をしてもらう
リピートにつなげるには、来院した時に次の予約をとってもらうことも有効です。
来院時に予約を行うことで、来院間隔を一定にできます。また患者さんが他の接骨院・整骨院に流れてしまうことも防げます。
患者さんにとっても、早めに予約を抑えることで、希望日時を抑えられることはメリットです。次回予約をすることのメリットを患者さんにも伝えることで、来院時の次回予約をしてもらいやすくなります。
通院する目的を明確に伝える
患者さんに一定のペースでリピートしてもらうには、来院の目的を明確に伝えることがポイントです。
目的を明確に伝えないと「今月1回くらいお休みしようかな」と定期的な通院が難しくなります。
「現在行っている施術は〇〇という目的で、〇週間に1回の通院が必要です」と明確に伝えた上で、先ほどご紹介した次回の来院予約を行うとさらに効果的です。
院内を清潔に保つ
患者さんにリピートしてもらう上で、院内の清潔感は必要条件です。成功している接骨院・整骨院は必ずと言って良いほど清潔感があります。
逆に初めて行った接骨院・整骨院が清潔感にかけていた場合、施術内容がどれだけ良くてもリピートされない可能性もあります。
患者さんの目に付く場所は最低限、清潔感を保つことが大切です。
HPの作成とオンライン予約システムの導入
現在ホームページは大切な院の看板であり、玄関になりえるものです。
せっかく良い評判を聞いても、情報が出てこないと不信感となり、来院してもらえなくなる可能性もあります。
口コミで来院しようと思っている方や、近隣で来院を考えている方が安心して通院できるように、院内の雰囲気やスタッフの顔写真など、親近感のあるデザインで見やすいホームページを作っておくと効果が高いといえます。
また、患者さんはいつも時間があるわけではありません。
ふと思い出した時に予約を取れるだけで来院頻度は必ず上がります。
システムを導入することで、24時間受付を行うことができるので、便利なだけでなく、院内の業務効率を向上させることも可能です。
患者さんと施術者のより良い関係性を作り、リピートや紹介を増やすことができれば院の運営は安定します。
→予約管理システムを導入するメリットついて詳しくはこちら
SNSの活用
近年は、ホームページだけでなく、SNSによる情報発信も求められています。
普段どのような投稿をしているかで、これから来院を考えている患者さんは自分の悩みを解決してくれそうか、安心して通える場所かを判断しています。
評判や口コミを聞いて、ホームページを閲覧後、SNSを確認してから予約を取る方が増えています。
せっかくのチャンスを無駄にしないように、普段から行っている活動やトピックスをSNSで情報発信しておくと良いです。
患者への口コミの促進、紹介プログラムの策定
新しい場所に行くのは誰でも多少緊張するものです。患者さんの口コミで新規の方が来やすいように、院の魅力がわかる口コミを集めると良いです。
正しい口コミ収集は必ず信頼感につながります。また、金銭等で口コミを集めることはNGな場合があるので注意が必要です。せっかくの努力が無駄とならないように、正しい運用方法を心がけてください。
また、紹介プログラムは、患者さんが新規の方を紹介する時にスムーズな紹介となるように働いてくれます。狙いに沿った内容を取り決めることが重要です。
既存患者さん、新規患者さん、治療院や施術者のそれぞれがメリットを感じられるように紹介プログラムを策定すると良いです。
そして、期間を決めてその施策が正しかったのか振り返ることも重要です。定期的に内容が適正かチェックしてください。
④適正な経営費比率を知る
経営で成功したかを知るためには、適正な経営比率を知ることが必要です。
ここでは、接骨院・整骨院の運営に最適な利益率、人件費率、家賃比率、販促比率をご紹介します。
利益率
利益率とは、売上金額に対しての利益の割合を表します。
日本政策金融公庫総合研究が公表した利益率の目安は3.6%。
一般的な治療院の場合、利益率が4〜5%で黒字経営を維持できると言われているので、まずは4〜5%の利益率を目標にすると赤字になることは無いです。
(参照:日本政策金融公庫)
人件費率
接骨院・整骨院における人件費は、経費の大きな割合を占めます。
人件費の目安は40%前後と言われます。
この中にはスタッフの給料だけでなく社会保障や福利厚生にかかる費用も含まれます。
人件費は大きな割合を占めるので、経営に不安がある方は最低限のスタッフで始めると良いです。
経営が安定し、人員不足になってから新たにスタッフを募集するとリスクも抑えられます。
家賃比率
家賃比率とは、売り上げに対する家賃の割合です。
家賃比率の目安は10%前後と言われます。家賃は、毎月必ず必ず払わなければならない費用です。
開業のエリア探しや物件探しをする際は、自分の理想とする立地や物件の相場をしっかりと調べた上で探すと、無理のない経営につながります。
販促比率
販促比率とは、集客をする上で必要な広告費にかける割合です。
販促比率の目安は3〜5%と言われています。
改行して間もない頃は、販促費に回すお金の捻出が難しい場合もあるかもしれません。
しかし、他の接骨院・整骨院がしてない販促を行えば、その分差別化も図れます。
ポイントを押さえて接骨院・整骨院の経営を成功させよう
接骨院・整骨院の店舗数は年々増加しており、競争は激しさを増す一方です。
新規の患者さんの獲得、リピート率の向上、メニューの見直し、経営比率の見直しを行うことで売上はグッと変わるはずです。
これから自分で開業しようと思っている方や、開業したけど思うように売り上げが伸びない方は、本記事でお伝えしたポイントを今一度見直して、より良い経営を目指してください。
監修者プロフィール
- 大学卒業後、東京医療専門学校に進学。鍼灸マッサージ師、柔道整復師の国家資格を取得。整骨院や整形外科などの医療機関にて臨床現場を経験し、その後カナダ・トロントへ留学。現地治療院にて臨床を経験し、帰国後、麻布十番に治療院を開業。
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