個人事業として美容クリニックを開業した場合、毎年確定申告を行い、納税する義務が生じます。確定申告で算出された所得に対し税金の額が決まるので、正確に申告しなければなりません。確定申告を行う上で、見落としがちな税金対策についてご説明します。
節税のコツ、必要経費を見直そう
個人事業主の確定申告において、所得税の計算のもとになるのが事業所得です。そして事業所得とは、収入から必要経費を引いたものを指します。つまり必要経費の額により事業所得の額も上下します。
必要経費とは、所得を得るために必要であったものを指しますが、明らかに必要とされるものや、判断に困るものなどがあると思います。どのようなものが必要経費として認められるのか、個々について見てみましょう。
美容クリニックの場合、スタッフの給与やテナント料、水道光熱費、施術に必要な消耗品などが必要経費として明らかなものの代表です。
では衣服に関する経費は必要経費になるのでしょうか。スタッフのユニフォームなどは必要経費に当たりますが、クリニック内で身に着けるために購入したものであっても、プライベートでも着用する場合は原則として必要経費とは認められません。
必要経費の中には、接待交際費として認められているものもあります。お中元やお歳暮などの贈答品、取引関係のパーティ参加費や飲食費なども、所得に関連するものであれば必要経費として計上することが可能です。
また、接待ではありませんが、スタッフとのミーティングなどで使用する食事費用なども、業務に関連する経費であるとみなされ、必要経費とすることができます。
事業とプライベート、必要経費の分け方とは?
プライベートで購入したが、美容クリニックでも使用しているという場合、その費用はどう判断すればよいのでしょうか。
代表的なものとして挙げられるのが自動車です。主に通勤手段として使用しており、休日に買い物などで使うこともあるというような事例です。このような場合は、自動車に掛かる費用のうち、通勤に必要な部分(有料道路費、駐車場費など)は全額必要経費になります。またそれ以外にかかるガソリン代、車両保険料、自動車税、修理費用、車検費用などは、全体の走行距離から通勤に使用している走行距離の占める割合を算出し、支出の総額を割合に応じて振り分けることで、必要経費として算出することができます。
同じように自宅であっても、仕事をするための書斎やワークスペースを設けている場合は、そのスペースが占める割合によって、家賃や火災保険料等から必要経費を算出することができます。持ち家の場合は、固定資産税、減価償却費、住宅ローンの金利などを面積から割り出し、同じく必要経費として計上することができます。
通信費となるインターネット回線費や、携帯電話料金に関しては、クリニック専用のものを用意すれば問題ありませんが、プライベートと共用の場合は、使用時間をもとに割合を算出します。
必要経費として認められないものとは?
税務上、必要経費として計上できないものとして、事業主の生命保険料があります。こちらは確定申告時に「生命保険料控除」として控除の対象となるためです。また事業継続のために健康を管理する必要があると考え、健康診断や人間ドックを受けたとしても、通常経費とみなされ必要経費とはなりません。
家族や親族がスタッフとして働いていた場合、事業主と生計を同じくしていれば、給与の支払いに関して必要経費とはなりません。一般のスタッフの給与は必要経費とみなされますが、例えば家族が看護師として勤務していた場合、その給与は必要経費とはならないのです。誤解されやすい部分ですので注意するようにしましょう。
必要経費を不足なく計上することで、結果的に正しい事業所得が算出されることになります。税理士に依頼している美容クリニックも多いと思いますが、必要経費は収入を得るためにかかった費用ですので、面倒でも細かく算出し、正確な納税ができるように努めましょう。